地下回廊
ズズズズズズンン!!
夜明け前の静寂を破って地響きと前後左右に激しく揺さぶられる様な衝撃が辺りを征圧した。
巡行ミサイルの着弾。
悲鳴があがる中、べるが叫んだ。
「みんな、大丈夫?!」
「ああっ、平気みたい・・」
「耳がわんわんしてる・・・」
みんな、大丈夫だったみたいだね。
航空機から発射された巡行ミサイルの爆発だった。通常、爆発はモンロー効果と呼ばれ下へと伝播しにくい。
「もうちょっと遅かったら危なかったね!さあ、先を急ぎましょう!」
光の精霊、ウィル・オー・ウィスプに照らされた地下水路脇のキャットウォークを進む一行の背後から突然雄叫びが聞こえる。
「なに?!」
背後、遠くのウィル・オー・ウィスプ達が1つ、また1つと爆ぜるようにすうっと消えていく。
「アウルアイ!背後から何か追ってきてる!」
「・・・アウルアイ!聞こえる?」
「無理よ。地下だから届かないわ」
「みんな急いで!走って!!」
先へ先へと小走りに走り出す一行達。
背後から迫ってくる気配にえるのとべるは対峙する事を決めた。
少しでもみんなが逃げる時間を稼がなきゃ。
べるは背負っていたカバンを地面に降ろすと中身を取り出し組み立てはじめた。組み立てるとべるの背丈より長いライフル銃。
アンチ・マテリアル・ライフル。
昔、人間界では対戦車ライフルとも呼ばれていた種類の大口径の対ジャム装備。
スコープを覗く、べるの表情が曇る。
「やはり、アイツだ。」
ゆらり、と全裸とひげだらけで血まみれの男の姿が浮かび上がってきた。
先程、べるがトドメを刺した相手。
口の周りを泡だらけにし、もはや何を話しているのかわからない言葉を吐き出している。
ピン!!!
轟音と共にべるのチャイムが火を噴いた。
すざまじい反動がべるの右肩を襲い、銃口近くの土ほこりが舞い上がる。
よろめく男。
しかし、何も無かったかのように向かってくる。
「高耐性ジャム?まさか?!」
遊底のボルトを引き、カートリッジを廃莢して次弾を装填、引き金を絞る。
また甲高いチャイムの音色。
しかし、迫ってくる男を阻むまでにはいかなかった。
「べる姉!ダメだ!退却!!」
「なんで!なんでなの!!」
光の見える出口へと急ぐ2人。
そしてその後を唸り声をあげながら追いかける男。
そんな中、前から人間の足音が聞こえてきた。
「挟まれた?!」
新しい敵?別動隊?そう思い、またもう駄目かも?と色々思い始めた瞬間、銃を持った大きな人影がふたつ、2人の頭上を飛び越える。
きゃあっ!!
悲鳴を上げ、頭を抱えてうずくまる2人。