遥かなる星に想いを馳せて
今、あの夜空で瞬いている星。
あの星は今、この瞬間、すでに存在していないのかもしれない。
悠遠の距離と悠久の時間を超えて、僕の目に飛び込んで来る、あの星の光。
そして、この光が誕生した時、僕はまだ生命ですらなかった。
更に言えば、この世界に生まれてこれるかどうかすら、定かではなかったはずであろう。
本当に壮大なる、すれ違いなのかもしれない。
しかし悠遠の距離と悠久の時間が、その余りにも壮大なすれ違いを繋ぎ止めてくれているのではないかと思ったりもするのです。
恐らく僕は明日、命を落とす事になる。
物心ついた頃から戦乱の中に身を置いてきた僕は、ここまで生きてこれただけでも奇跡なのかもしれない。
しかし、さすがに明日は奇跡は期待出来ないだろう。
明日の戦いは僕達にとって絶望的に厳しい戦いが予想されるからである。
その僕が今、あの星と出会えた事。
それが僕にとっては最後の奇跡になるのかもしれません。
悠遠の距離と悠久の時間が、その奇跡を演出してくれたのです。
人生の最後にこの様な奇跡と出会えた事。
それがとても幸福な事に思えるのです。
仲間達は今、明日の戦いに備えての準備に追われている。
僕だけが、ちょっとサボらせて頂いて、此処まで抜けだして来ちゃったのです。
そういう意味で僕は裏切り者なのかもしれません。
しかし明日になれば、皆と運命を共にする事になるでしょう。
そして明日、僕達が全滅する事になったとしても、我々の戦いが終わる訳ではないのです。
いつの日にか、と我々に本当の「自由」と「平和」が訪れる事を、あの星に願う人が一人くらい居てもいいよね。