奴隷養殖場
2200年。
日本は奴隷の養殖場と化していた。
領土も本州を残すのみ。
100年程前に日米関係が悪化して米軍が日本から撤退を始めた。
グローバル化が進み、地理的に遠い場所から影響力を持続する事のメリットも少なくなっていた米国にとって、関係が悪化した日本をわざわざ守る必要も無い。
そして米軍が日本からの撤退を終えると間もなく、待ち構えていたかの様に中国が沖縄への侵略を始める。
日米同盟が崩壊した日本には中国の横暴を止める術は無かった。
米国は米国で遠くの土地よりも近くの土地。
メキシコへの侵略を始めていた。
すでに他国への侵略行為が否定されていた時代では無い。
世界の風向きが変わっていた。
地球の温暖化に伴い、海面上昇を招き、人間の生活可能域がどんどんと減っていく。
それを補う為に他国を侵略する事が当たり前になっていたのである。
そんな中、東アジアでは着々と軍事力を増強してきた中国のやりたい放題だった。
更にそんな中国を見て、ロシアも北海道への侵略を始める。
中国の沖縄侵略に戦力を疲弊させられていた日本はロシアの侵略に抵抗する事すら出来なくなっていた。
そして沖縄の占領を終えた中国は九州、四国へも侵略を続けていく。
その結末として、日本に残された国土は本州だけ。
それも日本人を閉じ込めておく為の土地でしかなかった。
そして他国は日本人を奴隷として必要なだけ連れていく。
すでに日本は国家として何の力も無かった。
奴隷の養殖場として存続を許されている状態でしかない。
日本人は奴隷にされる事に怯えながら、絶望の中で生きる事を強いられてしまう。
200年前の日本人には想定する事すら出来なかった事なのかもしれない。
まさか、暴力が評価される時代が再びやって来るなんて。
しかし今更、そんな事を言ったところで後の祭り。
地球に数多ある生命と同じ様に時代も生きている。
今ある姿が永遠に続く訳ではない。
暴力が評価される時代から暴力が否定される時代になり、再び暴力が評価される時代になった。
それならば、再び暴力が否定される時代が来る事もあるだろう。
今はただただ、その様な時代が再び訪れる事を願って、命を繋いでいく外はない。
再び日本が世界に羽ばたける日が来る事を信じて。