屍ー鳥葬ー
おお。
おお!
集まって来たよ。
カラス達。
ほう、やっぱり。
そこからいきますか。
カラスも柔らかいところが好きなのかな!?
俺のハラワタはそんなに美味いのか!?
幾羽ものカラス達が俺の腹の中に嘴を突っ込んでくる。
そして俺の腹部にありつけないカラス達が俺の目玉を啄む。
あっという間に俺の二つの目玉はカラス達に食われてしまった。
続いて、カラス達はその眼窩から脳みそを啄んでいく。
俺の腹部に集まっているカラス達は俺のハラワタを食らうのに夢中だ。
そんな中で満足したカラスは、この場から飛び去っていく。
しかし、そこを埋める様に、次々と腹を空かしたカラス達が集まってくる。
本当にキリがない。
そして内蔵や脳みそなどの食べ易いところが無くなると、全身の肉をも啄む、カラス達。
すでに俺の大事なところも食べられてしまった。
死んでしまったから、大事もへったくれもないんだけど。
そして俺の肉体から、どんどんと肉が無くなって、少しずつ、少しずつ、骨が露になっていく。
このままいったら俺は、学校の理科室にあった骸骨の模型の様になるのだろうか。
空を見上げると、金星が出ていて、俺のみっともない姿を見て笑っている様だ。
所謂、明けの明星という奴である。
目玉を食われたのに金星が見えるというのも変だが、そもそも俺はすでに死んでいる。
視覚で見ている訳ではなく、俺の魂が見ているのだ。
そんな事を考えている間も、カラス達は俺の肉体を食らい続けている。
まあ、俺はもう死んでしまった訳だから、対象がカラス達であっても、役に立てるのであれば、別に構いはしない。
どんどんと食べてくれ。
カラス達の腹を満たす事が出来るのであれば、それでいい。
勿論、全てのカラス達を満たす事は出来ないだろう。
満たす事が出来なかったカラス達には申し訳ないが、勘弁して貰う外はない。
少しずつ、少しずつ、カラス達がこの場を飛び去っていく。
もう俺の体に肉は殆どついていない。
数羽のカラス達だけが、僅かに残っている肉を骨から剥ぎ取って食らう。
そして、その僅かに残っていた肉も全てカラスに食われてしまった。
残っていた数羽のカラス達も、この場から飛び去っていく。
嗚呼。
俺は本当に骸骨の模型の様になってしまった。
金星がこんな俺の姿を見て、憐れんでいる様だ。
しかし仕方がない。
所詮は死なんて、こんなものなのだろう。
格好よく死のうとも、みっともなく死のうとも、死は死でしかない。
そして一つの死が多くの命を繋いでいく。
俺がそうであった様に、俺もまた、そうなっただけの事。
皆もまた、そうである様に、これから皆もそうなるはず。
俺の命なんて、そんな繋がりの一幕にしか過ぎない。