第180話 進行状況を確認
『現在はレンジャーと司法局機動部隊が厚生局本局ビルに続く道の封鎖を始めたところだ。安城の姐御は上空でヘリで待機中。作戦開始と同時に合同庁舎にラベリング降下で構成局本局の建物に突入する準備は万全だ。それに加えてちっちゃい姐御が地下から潜入中……同盟厚生局の皆さんは完全に包囲されてる。もうこうなっては袋の鼠って奴だ』
かなめはそう言ってニヤリと笑った。隣のモニターが開きかなめの不謹慎な笑顔に頭を抱えるカウラが映し出された。
『神前曹長、すぐに機体を立てろ。それから西園寺には最新のデータを私の手元に送るように。もしあのプラントが地上に出てきた場合、どんな微妙な変化でも見逃すわけにはいかない。攻撃を受けた反応はすぐに分析して次の攻撃に活かせ』
『まあまあ、攻撃後の分析をすぐにしろだなんて、人使いの荒い隊長さんだこと』
ぶつぶつとつぶやきながら首筋のスロットからコードを出して手前の端末に差し込んでいるかなめの姿が見えた。
『クバルカ中佐達が動き出したな……神前曹長!』
カウラの言葉に合わせてトレーラーのデッキアップが開始された。それまで寝ているような体勢だった誠も次第に垂直に起き上がっていく感触で興奮してくるのを感じていた。
目の前には官庁街らしく煌々と光る窓からの明かりに照らされながら灰色の機体が司法局の裏庭にそびえたった。
『なるほど都会は良いねえ……道が広くて。電柱も、電線も無い。これが豊川だったら電柱を折って、脇道に立ってる住宅とかを破壊しながら進むことになるからな』
ニヤニヤと笑うかなめを一瞥した後、誠はそのままトレーラーから伸びるコードを愛機からパージして自立させた。
『とりあえずこのまま合同庁舎まで進行するぞ』
足元を走るカウラの軽装甲車両の先導で誠の機体は進んだ。避難する官庁街の人々の視線が恨みがましいように突き刺さるがそれが誠には痛々しく感じられた。
『見られてるぞ、神前。無様なところは見せるんじゃねえぞ。司法局を代表している気持で行け』
面白半分にかなめがつぶやいた。だが、誠はそれに満面の笑顔で答えた。
『現在地下通信ケーブルの中をクバルカ中佐の部隊が進行中だ。とりあえず視線をこちらに集めることが当面の目的になるな。できればクバルカ中佐があの化け物と化け物を製造している施設を制圧してしまえば神前の出番はない。我々はあくまで何かあった時の予備要員なんだ』
カウラの言葉が終わるまもなく目に入った合同庁舎からロケット弾が05式に浴びせられた。
『厚生局の対麻薬取締り部隊か。重火器はほとんど持っていねえはずだから重装甲が売りの05式なら余裕で対応できるだろ?楽勝楽勝……っておい!なんであんなものがここにあるんだ?厚生局はシュツルム・パンツァーは保有してねえはずだぞ!』
そう言うかなめの一言が思い込みだというのが誠は目の前の巨大な影ですぐに分かった。東和陸軍保有と思われる07式特戦が視界に入った。その姿に誠は驚きを隠せなかった。