第101話 陽動作戦の効果
「向こうも始まった。あっちは派手に動いてもらわねーとこちらが困るんだ。西園寺、先導を頼むぞ。あくまでも慎重にな」
ランは呆然と窒息して倒れこんだ警備兵を見下ろしていた視線を引っ張り上げて立ち上がった。正門の警備兵が倒されているが、裏門の派手な銃撃戦に気を引かれている基地の兵士達は寝ぼけた調子でとりあえず護身用の拳銃を手に裏門へ走っている様が見えた。
「どんなことが起きても絶対に撃つなよ神前。アタシ等は見つかったら作戦は即中止だ。それに射撃下手のテメエが撃つとどこに弾が行くかわからねえ。面倒ごとは御免だぜ」
先頭を歩いていたかなめが振り返った。誠は大きく頷いた。
射撃が苦手なことは自覚している誠もわざわざ自分から銃を撃つような真似はしたくなかった。
隊舎の建物の裏手、影の中を誠達は進んだ。遭遇する敵兵は居なかった。
「茜もやれば出来る子なんだな。向こうの銃声が止まねえ。この調子でガンガン撃ちまくってくれているとこちらとしても都合がいいや。
かなめは皮肉のつもりでそう言うと影の中を確認しながら裏の武器庫の隣をすり抜けようとする。
「誰だ!」
武器管理を担当しているような感じの士官が拳銃を向けているのが誠の目にも入った。しかし慌てずにかなめはそのまま士官の手に握られた拳銃を蹴り落とす。そしてすぐさまサバイバルナイフを手に士官を締め上げた。
「眠ってろ。起きた時にはすべてが終わってるはずだぜ」
かなめは士官の口に薬剤のスプレーをねじ込むと噴射した。意識を失う男を確認すると、そのままラン達を引き連れて隣の別棟にたどり着いた。
「さあて、どんなものにお目にかかれるかねえ。三郎が扱っている商品。生きているのか……仮死状態か……まさか腑分けされて臓器の状態でご対面なんてのは御免だぜ」
軽口を良いながら飛び出したかなめは歩哨を叩き伏せて入り口の安全を確保した。
かなめはホルスターから抜いた拳銃を握って建物の内部に突入する。誠も続くが人の気配はまるで無かった。