第19話 特殊なパスワード
「とりあえず、技術開発局でパスワードを発行してもらわないといけないっすからそっちに寄るっす」
全員が落ち着いたとわかるとラーナはそう言った。
「パスワード?なんでこんな入場制限しているところでパスワードなんか必要なんだ?」
最後尾を着いてきた島田がいぶかしげにつぶやいた。同様に茜、ラーナ、ラン以外の面々が不思議そうな顔でラーナを見つめた。
「まーそれだけ他所には知られたくねー事実なんだ。内部の内部の人間にも知られてはならない極秘情報。これがバレたら天地がひっくり返る。そんなヤバい話になるんだ」
そう言うとランは開いたエレベータに真っ先に乗り込んだ。誠達も急いでその後ろに続いた。
「そんな情報、よく東都警察が司法局にその処理を依頼しましたね」
一人冷静なカウラがそう言ってすべてを知っているだろう茜に目をやった。
「東都警察には手に余るほどの事件なのよ、この事件は。東都警察の覚醒した法術師の数は少ない。誠さんクラスとなると皆無と言って良い。だから、司法局に面倒ごとを押し付けた。組織なんて言うものはみんなそんなものですわよ」
少し諦め気味に茜はそう言って笑った。そこには口惜しさと悲しさと危機感がにじみ出ていた。
「東都警察も困った事が有ると全部うちに押し付けるのね。うちは便利屋じゃないのよ。まったく、そんなことなら東都警察の余ってる予算をうちに回してほしいわよ。東都警察って結構儲かってるらしいわよ。駐車禁止の罰金がこの前上がったじゃない?そのおかげで東都の財務局はウハウハ言ってるとか。うちが第二小隊の機体さえ買えない貧乏人だからって足下見てるのよ」
アメリアはなんでも面倒ごとを押し付けて来る民事警察に対する怒りを金の話に例えて吐き出した。
「そんなこと言っても仕方ねーじゃねーか。それもお仕事だ。クラウゼ、割り切れよ」
いつもなら暴走する自分を止めているアメリアが暴言を吐き続けるのをランはなんとか止めようとそう言った。