第8話 発見場所が集中する死体の意味
「最近の殺し屋は清掃業務も兼ねてるのかね、ふき取るどころか血液反応もなかったんだろ?たぶん凄い掃除機とか持ってるんだろうな。ルミノール反応を消す方法については叔父貴が詳しいらしいや。あの『駄目人間』前の戦争ではその手口で地上から何人も人間を『消した』って言ってやがった。そう言うプロの手口だな」
かなめの軽口だが、その口調と表情にはピリピリとした空気に包まれていた。かなめ以外の全員の意識ものんびりとした年末のおもちゃ屋のプラモデルコンテスト向けのプラモ作りから本来の遼州同盟司法局員としての仕事にすり替わっていた。
「じゃあこちらも見てもらうっす」
そう言ってラーナが端末をテーブルに置いて起動した。二枚も異様な遺体の写真を見せられてこの部屋の誰もがうんざりしながら端末のモニターを開くのを注視した。
ラーナの目の前の空間に画像が映った。それは東都南部の港地区と埋立地の『租界』と呼ばれる遼南難民の居住区を写した地図だと分かった。その東都側の周辺部に七つの×印が記されているのが見えた。
「良いかしら。この死体が見つかったのが港地区の北川町。そして先ほどの死体が見つかったのがそこから国道を車で十分ほど租界に向けて走った川村駅のガード下。そして他にも……」
茜の声にあわせてラーナが端末のキーボードを叩いた。先ほどの7つの死体が港地区と租界の間の幹線道路沿いに次々と現れた。
「港湾地区か……一昨年まで続いた不況でつぶれた町工場に倉庫街……それに安アパートばかりの街だな。こんな死体が落ちていたところで見向きもされないような場所。発見できたのが奇跡的ですね」
カウラはそう言うと隣で放心したように地図を見つめているかなめに目をやった。誠もかなめがこの地図が浮かんだときから黙り込んでいたことを思い出して口を開こうとするかなめを見つめていた。