20
それから1時間後。
早坂さんとベッドを共有しながら、わたしは暗闇の天井を見つめ、1人思いふけっていた。
なぜ、こんな事になっているんだろう。今更過ぎるが、なぜわたしは早坂さんと同じベッドで寝ているんだ。
夕方まで寝ていたせいで、眠気など1ミリもない。そのせいでこれ以上ないくらい頭が冴えている。その反面、これは現実なのかと、夢を見ているような、ふわふわした自分もいる。
"適度"な距離を保ち、隣にいる早坂さんは何を考えているんだろう。両腕を頭の下で組んだまま大人しくしているが、呼吸や足の動きで起きているのがわかる。
「起きてます?」
「気が合うわね。あたしも今、同じ事聞こうとしてたわ」
「ビックリするくらい眠くないんですけど」
早坂さんがクッと笑った。「そりゃそーよね。さっきまで寝てたようなもんだし」
「早坂さんも全然?」
「ええ、むしろ冴えまくってるわ。何して遊ぶ?」
「・・・しりとりとか?」
「じゃあ、あたしからいい?」
「どぞ」
「寝酒でも、飲もうかし"ら"」
「・・・楽になったからって、調子に乗らないでくださ"い"」
「一杯だけなら、い"い"?」
「ダメに決まってるでしょう、何言ってるんですか」
「あら、もう終わったの?チェッ」
「それで思い出した。今日来た時、シンクにウイスキーのグラスあったんですけど、アレいつ飲んだんですか?」
「・・・・・・次は何する?」
「昨日飲んだんですね?」
「美麗ちゃんじゃない?」
「聞けばわかりますけど」
「・・・少ししか飲んでないわ。ほんの少し」
「量の問題じゃありません!高熱ある人間が、なんで飲もうとするんですか!」
「いやー、それがね、嫌な夢見るから熟睡できればと思って飲んだんだけど、飲んだら、ああ違うなって思ってすぐに捨てたのよ。これは本当よ」
「・・・当たり前ですよ。身体が辛い時、嫌な夢見るのはわかりますけど・・・ぜったい駄目です」
「そうね。肝に銘じるわ」
──どんな、夢を見るんですか?
聞きたいけど、今は聞いてはいけない気がした。