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それから1時間後。
早坂さんとベッドを共有しながら、わたしは暗闇の天井を見つめ、1人思いふけっていた。
なぜ、こんな事になっているんだろう。今更過ぎるが、なぜわたしは早坂さんと同じベッドで寝ているんだ。

夕方まで寝ていたせいで、眠気など1ミリもない。そのせいでこれ以上ないくらい頭が冴えている。その反面、これは現実なのかと、夢を見ているような、ふわふわした自分もいる。

"適度"な距離を保ち、隣にいる早坂さんは何を考えているんだろう。両腕を頭の下で組んだまま大人しくしているが、呼吸や足の動きで起きているのがわかる。


「起きてます?」

「気が合うわね。あたしも今、同じ事聞こうとしてたわ」

「ビックリするくらい眠くないんですけど」

早坂さんがクッと笑った。「そりゃそーよね。さっきまで寝てたようなもんだし」

「早坂さんも全然?」

「ええ、むしろ冴えまくってるわ。何して遊ぶ?」

「・・・しりとりとか?」

「じゃあ、あたしからいい?」

「どぞ」

「寝酒でも、飲もうかし"ら"」

「・・・楽になったからって、調子に乗らないでくださ"い"」

「一杯だけなら、い"い"?」

「ダメに決まってるでしょう、何言ってるんですか」

「あら、もう終わったの?チェッ」

「それで思い出した。今日来た時、シンクにウイスキーのグラスあったんですけど、アレいつ飲んだんですか?」

「・・・・・・次は何する?」

「昨日飲んだんですね?」

「美麗ちゃんじゃない?」

「聞けばわかりますけど」

「・・・少ししか飲んでないわ。ほんの少し」

「量の問題じゃありません!高熱ある人間が、なんで飲もうとするんですか!」

「いやー、それがね、嫌な夢見るから熟睡できればと思って飲んだんだけど、飲んだら、ああ違うなって思ってすぐに捨てたのよ。これは本当よ」

「・・・当たり前ですよ。身体が辛い時、嫌な夢見るのはわかりますけど・・・ぜったい駄目です」

「そうね。肝に銘じるわ」

──どんな、夢を見るんですか?
聞きたいけど、今は聞いてはいけない気がした。

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