18
「風邪薬なんてどれも同じだと思ってたわ。ああ、期限が切れてたから効かなかったのかしら?」
──もはや、突っ込む気にもなれないが、これを機にもう少し知ってもらいたいものだ。
「次に風邪を引いた時は、シッカリお願いしますよ」
「イヤよ」
「・・・いや!?」
「だから、また来て」
不覚にも、可愛いと思ってしまう自分がいた。子供みたい。
「その時考えます」
「ええっ!?そこは、うんって言うとこじゃないの!?」
「大丈夫ですよ。うん十年ぶりの風邪のようですし?次はよぼよぼのおじいちゃんになった時じゃないですか」
「じゃあ、その時はそばにいてね」
──・・・来てね。ではなく、いてね。
それはまるで──・・・「そういえば、瀬野さんに連絡しなきゃ」
「無視?」
「心配してるだろうし、帰る時に連絡しろって言われてたんですよね」
「とことん無視なのね。瀬野なら、さっきあたしが連絡したわよ」
「えっ、そーなんですか?」
「ええ、あなたがあたしの腕の中でスヤスヤ寝てる時に」
──この男、わたしの"照れ隠し"に気づいて言っている。そういう笑顔(かお)だ。
「そうですか。何時に来れるのかな・・・」
「来ないわよ」
「・・・はい?」
早坂さんはベッドから立ち上がり、天井に向かって身体を伸ばした。
「泊まるって言ったから」
「・・・・・・誰が?」
「プッ、あなた以外誰かここにいる?」
次に早坂さんは腕のストレッチを始めた。ボキボキと怖いくらい骨が鳴る。
いや、そんなことより──「わたし泊まるんですか!?」
「・・・嫌なの?」
「いっ・・・やじゃないですけど・・・」
「今日お休みよね?明日の朝あたしが送ってくから」
「雪音!泊まってげ!ババ抜きするべ!」
「おばあちゃん・・・勝っちゃうよ」
「さーて、ある物で夕飯でも作ろうかしらね」
──なぜか、こんな展開になってしまった。
一応、2人きりではないし変に意識する必要はないよね。しかし、さっきの事を考えると──。
「卵とウインナーはあったわね。雪音ちゃん、オムライスとチャーハンだったらどっちがいい?」
まあ、この男は平然としているし?無駄に気を揉むのはやめよう。
「オムライスで」