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「風邪薬なんてどれも同じだと思ってたわ。ああ、期限が切れてたから効かなかったのかしら?」

──もはや、突っ込む気にもなれないが、これを機にもう少し知ってもらいたいものだ。

「次に風邪を引いた時は、シッカリお願いしますよ」

「イヤよ」

「・・・いや!?」

「だから、また来て」

不覚にも、可愛いと思ってしまう自分がいた。子供みたい。

「その時考えます」

「ええっ!?そこは、うんって言うとこじゃないの!?」

「大丈夫ですよ。うん十年ぶりの風邪のようですし?次はよぼよぼのおじいちゃんになった時じゃないですか」

「じゃあ、その時はそばにいてね」


──・・・来てね。ではなく、いてね。

それはまるで──・・・「そういえば、瀬野さんに連絡しなきゃ」

「無視?」

「心配してるだろうし、帰る時に連絡しろって言われてたんですよね」

「とことん無視なのね。瀬野なら、さっきあたしが連絡したわよ」

「えっ、そーなんですか?」

「ええ、あなたがあたしの腕の中でスヤスヤ寝てる時に」

──この男、わたしの"照れ隠し"に気づいて言っている。そういう笑顔(かお)だ。

「そうですか。何時に来れるのかな・・・」

「来ないわよ」

「・・・はい?」

早坂さんはベッドから立ち上がり、天井に向かって身体を伸ばした。

「泊まるって言ったから」

「・・・・・・誰が?」

「プッ、あなた以外誰かここにいる?」

次に早坂さんは腕のストレッチを始めた。ボキボキと怖いくらい骨が鳴る。
いや、そんなことより──「わたし泊まるんですか!?」

「・・・嫌なの?」

「いっ・・・やじゃないですけど・・・」

「今日お休みよね?明日の朝あたしが送ってくから」

「雪音!泊まってげ!ババ抜きするべ!」

「おばあちゃん・・・勝っちゃうよ」

「さーて、ある物で夕飯でも作ろうかしらね」


──なぜか、こんな展開になってしまった。
一応、2人きりではないし変に意識する必要はないよね。しかし、さっきの事を考えると──。

「卵とウインナーはあったわね。雪音ちゃん、オムライスとチャーハンだったらどっちがいい?」

まあ、この男は平然としているし?無駄に気を揉むのはやめよう。

「オムライスで」

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