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第10話(2)激しい訓練

 俺は腰を掛けて入念に銃器の手入れをするオリビアに声をかける。



「オリビア、君もこの国の為に戦うのか?」

「……」

「ん?」

「アタイが戦うのはいつだってこれの為だよ……」



 オリビアが二本の指で小さい丸を作る。金か。俺は笑う。



「ははっ、らしいことを言うな……」

「ただ、今回はちょっとばかり例外だ……」

「例外?」



 俺が首を傾げる。オリビアは俺から視線を外す。



「ああ、あのアーチャーには、狙撃手としてのプライドを傷つけられたからね……」

「足に矢を仕込んでいるという奴か……」

「そうさ」

「しかし……」

「なんだい?」

「それは結構意外だな」

「意外?」

「ああ、プライドでは腹は満たされないだろう?」

「! まあ、それはそうだね。だけど……」

「だけど?」



 オリビアは俺に視線を戻す。いつも飄々としているが、いつになく真剣な眼差しだ。



「譲れないってものがあるんだよ……!」

「! そ、そうか……」

「もちろん、国の脅威を取り除いたことによる報酬も期待しているけどね……結構な額が出るだろうね、楽しみだ……」

「ははっ……」



 俺は思わず苦笑する。まあ、ある意味いつも通りだから良いのかな?

                 ♢

「えっと……」

「わざわざ呼び出しちゃって済まないねえ、ヴァネッサ……」



 オリビアがヴァネッサに声をかける。ヴァネッサが頭を下げる。



「ご、ごめんなさい!」

「……は?」

「色々と見聞を広めたいとは思って、故郷から出てきましたが、女同士というのはちょっと……わたしにはまだ早いかなって……」

「ちょっと待ちな……」

「で、でも、そのお気持ちはとっても嬉しいです!」

「待ちなって……」

「オリビアさんにはきっともっとふさわしいゴブリンが……!」

「だからちょっと待ちなって!」

「……え?」

「こっちがえ?だよ。何を勘違いしているんだい……」



 オリビアが頭を抱える。ヴァネッサが尋ねる。



「呼び出しとくれば、愛の告白か、教育的指導じゃないんですか?」

「世間知らずのわりには、色々と知っているじゃないか……」

「は、はい、それなりに勉強はしてきましたから」

「なんの勉強だよ……」



 オリビアが呆れる。ヴァネッサがようやく察する。



「もしかして……違うんですか……?」

「ああ、全然違う」

「ええっ⁉」

「……と、言いたいところだけど、まあ、当たらずとも遠からずといった所だね……」

「え……?」

「もちろん後者の方だよ……!」

「!」



 オリビアが拳銃を取り出す。ヴァネッサの顔つきが変わる。



「む……」

「あのジローという奴に借りを返さないといけないからねえ……」

「………」

「どうした、怖気づいちゃったのかい?」



 オリビアが笑みを浮かべる。ヴァネッサが口を開く。



「……良いんですか?」

「ん?」

「て、手加減とか出来ませんけど……」

「! ははっ、言ってくれるじゃないのさ!」

「‼」



 オリビアが銃を発砲する。ヴァネッサがそれをかわす。オリビアが驚く。



「か、かわした! なんていう反応⁉」

「はあああっ!」

「くうっ!」



 オリビアの懐に素早く入り込んだヴァネッサの鋭い攻撃をオリビアは防ぐ。



「! 手応えが無い⁉」

「そりゃあそうだ、完全には当たっていないからねえ!」

「むっ⁉」

「そらっ!」

「おっと!」

「はあっ⁉ ほぼほぼ零距離射撃もかわすってマジか⁉」

「それっ!」

「あ、危なっ!」

「か、かわされた⁉」

「へへっ!」

「な、なにがおかしいんですか⁉」

「おかしいねえ! 結構長生きしてきて、今までにないくらい良い訓練だからさ!」



 オリビアとヴァネッサによる激しい訓練は続く。

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