ニコちゃん先生5
四人並んで少し歩き、俺たちはついにルビンの父親の待っている、学校の玄関前に辿り着いた。
結局オールもトレイもここまでついてきてしまった。
でもここから先は多分子供たちには聞かせられない話になるので、どこかに遊びにでも行ってもらおうとしたのだが……
「あれ? 父ちゃん!? なんでルビンのおとーさんと一緒にいるんだよ!?」
オールが驚きの声を上げた。
オールの父親がルビンの父親と一緒に並んで話していたのだ。
オールの父親は息子に
「まぁ、ちょっとな」
と言って笑いかけた。
俺は他人行儀に
「ご無沙汰してます。ルビンのお父さんに、オールのお父さん」
と挨拶した。
「お久しぶりです」
ルビンの父親、情報屋の息子が丁寧に頭を下げる。
「よう。久しぶりだな」
オールの父親である元監守は気安い調子で軽く手を上げた。
形式上の挨拶を済ませた後、
「じゃあ先生たちは話があるから。三人は遊んでおいで」
と言ってオールたちを遊びに行かせた。
三人はすぐにグラウンドを駆け回り始めた。
放課後のグラウンドにはそこそこの数の生徒が様々な遊びをしている。
三人の姿はすぐにその光景に溶け込んだ。
俺は頬を緩めた。
子供は元気が一番だ。
さて、
「こんなところで立ち話もなんだ。応接室に案内するから、話はそこで聞こう」
俺がそう言うと、二人とも同意を示した。
応接室に着くと、情報屋の息子と元監守は隣同士に座り、俺は彼らの対面に座った。
「しっかし。お前が教師になるとはな。それも俺のガキの通ってる学校の先生になるなんて。縁ってのは不思議なもんだ」
元監守が感慨深そうに言った。
「俺だってそうさ。勤務先に知り合いの子供が通ってるなんて予想外だった。で? 今日は一体どういう用件だ。雑談しに来たわけじゃないんだろう?」
俺が訊くと、元監守は肩をすくめた。
「俺は別に。こいつとばったり出くわしたもんだから、興味本位でついてきただけだ」
「そうか。じゃあ俺に用があるのは店番だけということだな」
確認するように顔を見ると、情報屋の店番は頷いて肯定して
「と言っても、俺は別に何か依頼をしに来たというわけではありませんので安心してください」
そう言って微笑んだ。
「ああ。それは良かった。ようやく仕事にも慣れてきて、今は依頼って言葉を聞くことすら嫌なくらいだからな」
正直何か頼みごとをされる可能性が高いんじゃないかと考えていた俺はホッとした。
「依頼、ねぇ……。そういえばよく考えたらお前って昔、なんでも屋だったよな。やっぱり依頼って聞くと昔を思い出すのか?」
元監守が面白がるように訊いてくる。
俺はその質問を聞いて少し笑った。