15
「んん・・・」
熱い。
それに、苦しい。息がしづらい。
──あれ、わたし、何してたんだっけ。
ああ、そうだ。ここは、早坂さんの家だ。
早坂さんが寝たあと、わたしもちょっと寝ようと思って、それで──・・・
「ん?」
心臓が爆音を立てて鳴り始めた。
まてまてまて、この状況はいったい、なんだ?
落ち着け。1つずつ、理解していこう。
わたしはベッドに横になっている。見えるのは空のゼリーと、早坂さんの腕。右腕はわたしの頭の下。左腕はわたしのお腹。この"位置関係"で言うと、背中の温もりは──早坂さんの身体。そして口の中には、唐辛子。
「ブヘッ」 3本の唐辛子をベッドの上に吐き出した。──おばあちゃんめっ!
「ン・・・」
頭の上から聞こえた声に今度は心臓が止まりかけた。わたしに回る腕に力が入り、背中に早坂さんの身体が強く押しつけられる。ビクッと足が動くと、早坂さんの足が上から絡まる。
もはやわたしは、拘束状態だった。
──重い。そして、トイレに行きたい。
どうしよう。起こさずに、この拘束から逃れられるか。早坂さんの腕の中でゆっくり身体を捻ると、その腕が更にわたしを強く締め付けた。
ダメだ。これは、絶対脱出できないヤツだ。
諦めて、大人しくすることにする。
──しかし、この状況はいいのか。腕枕をされたことにも気づかなかった。
頭の上でスースーと早坂さんの寝息が聞こえる。よかった、熟睡出来ているということは薬が効いているのかも。
緊張が薄れると、決まって安心感に包まれる。この部屋に入った時からそうだった。ここは、早坂さんの匂いでいっぱいだから。
今、隕石が落ちてきて世界が消滅しても、悔いは無いな。そんな事を思いながら、再び目を閉じた。