第5話 かなめの采配の問題点
ダグアウト前ではかなめが難しい表情をして待っていた。誠は自分の配球の間違いを指摘されるかと思いびくびくしていたが、意外にもかなめは穏やかな表情で誠を迎え入れた。
「まあ、あれだ。オメエは限界だった。これはついてないことで知られるパーラをファーストに使ったアタシの采配のミスだ。アイツも今日こそはツキが回ってくるかと思ったんだが……気のせいだったみたいだな。気にするなよ」
かなめはそう言って無理に笑顔を作ろうとした。誠はここでも責められるのがどう考えても責任の無いパーラだと言う事実を知って彼女に同情せざるを得なかった。
「今日の神前さんの投球では自責点は二点です。本来なら勝ってるんですよ、神前さんは」
外野の控えでスコアーブックをつけていた最年少の技術兵西高志兵長がスコアーブックをベンチに置くと、誠の肩を慰めるように叩いた。誠は静かにグラブをベンチに置いた。
自慢の大学野球でも強打で知られる強力打線がエラーとファーボール以外でチャンスを作れなかったことに苛立っていた千要マートのベンチは、これまで抑えられていたピッチャーを攻略できたことにかなりの盛り上がりをみせていた。千要中部草野球後期リーグ第一戦の初戦の勝利が見えてきた相手は乗りに乗っていた。
「さすがに初登板から上手くはいかないか。草野球とはいえ、上には上がいるもんなんだな」
そう言うと誠は目をつぶり頭を抱えた。
エラーに足を引っ張られたことよりも自分のミスを責めてしまう。誠の性格はどちらかと言うとそう言う性格だった。