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「お前はサツだろ?」テロリストの男がマシューの耳元で囁いた。「それに、もう1人仲間がいるな?」

テロリストはマシューの腹に突き刺したナイフをゆっくり抜くと、わたしを見た。

──えっ・・・わたし?

血で染まったナイフを片手に、こちらへ向かってくる。
周りを見るが、ここにいるのはマシューとわたしだけだ。

ああ・・・次はわたしか。こんなことで死ぬんだったら、早坂さんに好きだと伝えればよかった。

目の前まで来たテロリストは、わたしのお腹にナイフの先端を突き当てた。

「白状すれば、命までは取らない。お前はサツだろう?」

「・・・なんのこと?わたしは飲食店に勤める、普通の女だ」

「そうか。残念だ」テロリストは不敵な笑みを浮かべた。

──ここまでか。わたしは死を覚悟して目を閉じた。
そして、ナイフがわたしの腹にめり込んで──うぐっ・・・・・うっ・・・ううっ・・・ぅう?

あれ。痛く、ない?
チクチクはするが、刺されるのってこんなものなのか?思わず自分の腹を見ると、ナイフは刺さっていなかった。かわりに違う何かが、わたしのお腹を攻撃している。
なんだ?黒くて、鋭い──あれは──・・・


「空舞さん?」

「やっと起きたわね」

「・・・・・・ん?」

状況の把握に努める。見えるのは家の天井。ここはソファーか。空舞さんは何処に?

「寝ぼけてるの?」

仰向けのまま、顔だけ上げた。空舞さんだ。
わたしの服は胸まで捲れ上がっていて、お腹の上には空舞さん。

「あれ・・・戻ってきたんですか?」

「何を言っているの?あれから10時間経っているわよ」

「・・・えっ!」

本当だ、カーテンの隙間から陽光が差し込んでいる。部屋の時計は9時ちょうど。

「あなた、言ったそばから同じ事を繰り返すのね。どうしたら寝ていてこんなにお腹が出るの?」

「・・・あれ、さっきまでドラマ観てたような・・・ぎゃっ!」

ヘソに痛みが走り、身体が勝手に飛び起きた。

「いつまで寝ぼけているの?」

「・・・もしかして、ずっとお腹突いてました?」

「あなたがいつまで経っても起きないからよ」

テロリストの夢は、空舞さんのせいにした。

「いつの間にか寝てました。キリの良いところで止めようと思ったんだけどな・・・」

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