第3話 急造キャッチャー相手に苦戦する誠
初回は幸先良くセンターを守る好打者で整備班班長島田正人准尉の今季四本目の先頭打者ホームランで先制したものの、急造キャッチャー大野相手に伝家の宝刀『フォーク』を使えない誠にとって、野球推薦で大学に入ってくるような野球エリートの大学生の打者を相手にするのは無理があった。
『あそこはフォークを投げたかったな……』
中途半端にストライクを取りにフォークではなくストレートを流し打たれた時は誠は思わずそう思って急造キャッチャーの中では一番マシと言うことでかなめが今日スタメンに選んだ大野をにらんで逆ににらみ返された。
『大野先輩は僕の変化の大きいスライダーはこぼすからな。仕方がない』
そう思いながら投げたカーブが浮いて押し出しのファーボールを選ばれて5回には逆転された。
『特殊な部隊』の野球部の特殊事情としては、固定されたキャッチャーが居なかった。キャッチングでもスローイングでもサードを守っているアメリアが一番うまく、誠もアメリアが相手ならば自慢のフォークを投げられるのだが、アメリアは頑として『四番・サード』以外のポジションでの試合参加を拒んでいた。
アメリアに言わせると『スターは四番でサード』だからと言うのがその良く分からないアメリア流の理由で、キャッチャーなどと言う頭を使うポジションをするぐらいなら試合に出ないとわがままを言った。
監督の西園寺かなめ大尉としても、サードなら守備もスローイングも問題なく、何より典型的な中距離ヒッターとして打点を稼ぐアメリアのわがままを聞いてやる他に道は無かった。したがって今日も急増キャッチャーの中では一番マシな整備班員の大野がキャッチャーを務めていた。