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第2話 強豪相手の後期リーグ初戦

 9月に入り『特殊な部隊』の野球部は後期開幕初戦でリーグでは万年二位のチームである『千要マート』と対戦した。

 千要マートは『特殊な部隊』の本部のある『菱川重工豊川工場』の企業城下町、豊川市近郊に五店舗を構えるスーパーチェーンだった。そこでは多くの大学生アルバイト、特に体育学部のある『印天堂大学』の学生が働いていた。

 監督を務める野球好きの千要マートのオーナー社長は、破格の待遇で印天堂大学の野球部の学生をアルバイトとして雇い、都市対抗野球の全国大会出場経験のある野球部OBで構成されたリーグの覇者『菱川重工豊川』打倒を掲げてこの千要中部リーグと言う草野球リーグに参加していた。

 しかし、都市対抗野球の全国大会優勝も二度ほど経験しているOBなどで構成された菱川重工豊川の壁は厚く、万年二位と言うのが10チームが参加するこの千要リーグでの戦績だった。そんな強豪を自称する相手チームの監督としても、加入二年目の新参者で格下の『特殊な部隊』相手に後れを取るわけにはいかなかった。

 機動兵器シュツルム・パンツァーで構成された機動部隊第一小隊二番機担当の西園寺かなめ大尉が監督を務める『特殊な部隊』の参加初年度の成績は10チーム中6位だった。女子選手三人がレギュラーに居る変わったチームとしてはまずまずの成績である。それがリーグ内での『特殊な部隊』の評価だった。

 『特殊な部隊』のエースになったばかりで、本格的に試合で投げるのは高校の夏以来六年ぶりの誠にとって、現役の大学生、しかも野球推薦で入ってきたような野球エリートで構成された打線はさすがに手に余った。

 その鋭いスイングを恐れてきわどいコースに投げ込もうとするあまり、どうしてもファーボールの数が増えた。当然、球数も増えて高校の夏の大会で肩を壊したことのある誠にとってはたとえ軟式とは言えども肩に違和感を感じるようになってきていた。

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