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本日、月曜日、16時15分─。
イタリアン酒場TATSUは定休日。
わたし中条雪音は、自宅の全身ミラーで1人ファッションショーを開催中である。

というのも、ネットショッピングで購入した洋服が先ほど届いたからだ。
白い薄手のニットが1つに、黒いタートルネックのオーバーサイズニット。おまけに黒いニット帽も1つ。
全部着用してみたが、今回はハズレが無いようだ。2回連続で失敗してからネットショッピングは避けていたが、3度目の正直となった。

とくにこのオーバーサイズのニットはダルっとしているけどだらしなく見えないし、細見え効果があるから気に入った。

オーバーサイズといえば──わたしはクローゼットへ向かい、1つだけサイズ感の違う黒いパーカーを手に取った。モゾモゾと腕を通し、鏡の前に向かう。

これも、可愛いんだよな。おそらく、"良い物"なんだろう。生地がしっかりしているから形も崩れず、非常にあたたかい。

泳斗くんに会った時、服が濡れたわたしに早坂さんが貸してくれた物だ。洗濯をしてから返しますとメールをしたが、あげる♡とハート付きで返ってきたのだ。そして図々しいわたしはそれを素直に受け取ったのだ。

早坂さんが着ても少しゆったりしていたパーカーは、わたしが着ると膝上まで来る。しかし、それがまた可愛い。
袖の匂いをクンクンと嗅ぐと、洗濯をしたはずなのに早坂さんの匂いが残っている。
それを思いきり鼻に吸い込む───・・・って、わたし、変態ぽいな。


そうこうしているうちに、家を出る時間が近づいてきた。そう、今日は一真くんと約束をしている。前に頼まれた、凌さんの誕生日プレゼントを買いに行く日だ。
何度着ているかわからないスウェットに同じく着古したジーパン、白いスニーカーと黒いキャップ。鏡を見るまでもなく、家を出た。

待ち合わせは地下鉄で2駅目にあるデパートの入口。そこは高級品ばかり扱う百貨店だが、一真くんは大丈夫だろうか。そんな余計な心配をしているわたしは、正しく余計なお世話だ。




約束の場所に、一真くんの姿はなかった。携帯の時刻を確認すると、10分ほど早い。ここは繁華街に近いのもあって待ち合わせに利用する人が多いと春香から聞いていたが、本当にそのようだ。店の入口に1人佇み、辺りを見回している人がちらほら。

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