第43話 唯一王 強敵と出会う
さあ、先へ進もう。
それから俺たちはさらに道を進む。
途中コボルトやオークと遭遇。当然俺たちを敵と認識して、戦闘。
すぐに倒して先へと進んでいく。
そしてその道中の景色を見て一つの真実に気づく。
「誰かがダンジョンに入っているんだ」
所々に魔物の死骸が道端に散らかっているのが確認できる。
何があったのか調べるため、その死体を見てみた。
「多分この先に、誰かいる」
「なんでわかるの?」
「死体、触ってみたけどまだ暖かいし、腐った匂いもしない。まだ新しい。恐らくだけど、この先にいると思う。ここでこのゴブリンと戦った奴らが」
もっとも、それが誰だかはわからない。けれど、一応警戒はしておこう。
「味方であることを、祈るしかなさそうですね」
「──そうフィッシュ。先へ進むしか、無いフィッシュ」
そして俺はさらに道を進んでいった。
やがて山のふもとの様な場所にたどり着いた。
「ここがダンジョンの奥への入り口よ」
洞窟の入り口のような場所。中は真っ暗。
俺が魔法によって明かりを灯し、洞窟の先へと進む。
明かりをともしたとはいっても道の先までは照らせない。どんな罠が待ち構えているかわからず、ゆっくりと周囲を警戒しながら中へと進む。
ダンジョンにふさわしい雰囲気をした道を歩いていく。
このダンジョンの中でも、魔物たちの死体を時折見かける。
冒険者達と戦った後だ。
それも損傷が相当激しい。かなり激戦を繰り広げていたのだろう。
体力も相当消耗しているはずだ。少し触ってみた。
「この死体、まだ暖かい。まだ戦って時間がたっていない」
「つまり、この先に戦っていた冒険者がいるってことね」
「そうだな」
激戦を繰り広げているということはその冒険者もダメージを受けているってことだ。
傾向的に、ダンジョンの奥に行けば行くほど強い敵が多くなる。
大丈夫だろうか。
それだけじゃない。強い魔物と対峙したら、力を合わせてくれるタイプの冒険者なのだろうか。
冒険者によっては獲物を横取りされることを恐れ、襲ってくる奴だっていた。
今はまだわからないけれど、どんな奴らと出会っても対応できるように警戒はしておこう。
そんな説明をフリーゼたちに行い、さらに道を進んだ。
もちろん、どこから攻撃が飛んできてもいいように神経を研ぎ澄ませながら。
そして、そんな時──。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
道の奥から爆発音がした。それも普通の術式ではここまで大きな爆発音は出ない。かなりのクラスの音。
フリーゼたちも一気に警戒モードになったようで、真剣な表情になる。
そしてレディナが話しかけてくる。
「あの奥がダンジョンの最深部よ。何かあるはずよ。行ってみましょう」
「そうですねレディナ。行ってみましょう」
最深部か。レディナの情報通りなら一番強いやつがいるはずだ。
最深部とはそういう場所だ。
そして俺たちは速足になりダンジョンの最深部へと向かっていく。
「着いたわ。ここが最深部よ」
ダンジョンの最深部。薄暗くて広い大広間みたいなつくりになっている。
壁には神秘的な模様の壁画があったり、見たこともないような文字の文章が羅列したりして、別世界のような雰囲気を醸し出している。
そしてこの部屋の中央には敵対している集団がいた。
まず一つ目──。
「アドナ、お前たちこんなところに潜り込んでたのかよ」
そこにいたのはなんとアドナたちだ。
ウェルキにキルコ、ミュア。それからトランもいる。
するとウェルキがにらみつけてきた。
「お前たち、何しに来たんだよ。分け前ならやらねぇぞ!」
相変わらずのケンカ腰。その言葉を聞いてレディナは警戒したような表情になり、俺たちの一歩前に出ると忠告をしはじめた。
「ちょっと、そんな事言ってる場合? あいつを倒すことがまず第一じゃないの?」
目の前にあるもう一つの勢力に目を向けながら──。
「ああん、あんなの見掛け倒しだろ? 余裕でぶっ倒してやるよ!」
アドナはレディナの忠告に耳を貸さない。
今までもウェルキは人の話を聞かず攻撃的に突っかかることが多かったが、今はいつにもましてひどい。
おそらくはSランク称号をはく奪され、傷つけられた自尊心を守ろうとして、過剰に攻撃的になっているのだろう。
「というかなんでこんなところに来たんだ? ここに来るクエストなんて存在していないはずだったろ?」
「へへっ、ここから金のにおいがしたんでよぉ。来て見ればこの状況だ。この強そうな魔物を倒して、またSランクに返り咲いてやるぜ!」
その言葉に俺は視線を彼らの先へと向けた。
大広間の奥には、財宝たちが山のように連なっている。手に入れれば相当な金になりそうだ。
最も持ち出して生きて帰ることができればということだが──。
しかしそれを遮るようにもう一つの集団がこちらを威嚇してにらみつけている。
真っ黒い光を身にまとった、首がない騎士が十体ほど。
そして彼らが取り巻きとなって、その中心にひときわ巨大な肉体を纏った魔物がこちらをにらみつけている。
その魔物からは強い魔力の気配がした。
「あいつがこの遺跡で一番強い魔物、『ウツロ』よ」