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「人間は愛を表現するのに唾液を交えるんでしょう?」
「言い方・・・。そんな事したら痴女ですよ。相手の気持ちもわからないのに・・・」
「遊里に聞いてみればいいじゃない」
頭が痛くなってきた。
「それが出来れば苦労しません。というか、そういう機会はあったんですけど・・・」 何かと邪魔が入る。それに、早坂さんのあの表情。
──これは、聞くべきではないということか?
中条雪音は自分によってダメージを受けた。
「わたしが聞いてあげましょうか?」
ギョッとして、思わず見えない空舞さんを見上げた。
「やめてください。自分の事は・・・自分で対処しますから」
「そう」
「それより、妖怪の目撃情報があったみたいですよ」今は一刻も早くこの話題から逃げたい。
「いつの話?」
「昨日です。詳しい事はまだわからないんですけど・・・」
そういえばと、携帯をチェックしてみたが、早坂さんからは何も来ていない。
「場所もわからないの?」
「何処かの山中って話でした。追って連絡貰う予定です」
「わたしも行くわ」
「はい、そう思ってました」
それから、早坂さんから連絡があったのはその日の夕方だった。明日の夜、わたしの仕事終わりに瀬野さんと迎えに行くと。そのまま例の現場に向かうと。詳しい事はその時に伝えるとの事だった。
また店に来るのか、と少し気持ちが滅入る。
「ゆ・き・ね・ちゃ〜ん?どおしたの?そんなに暗い顔し・て」
そう、この女が居るからだ。
「別に。至って普通です」 携帯を前掛けのポケットにしまう。
「デートすっぽかされた?」
「・・・違う」
「えっ、雪音さんデートなんすか?・・・早坂さん?」
そう、この男も。
「違うってば。デートではない」
「会う予定はあるってこと?」春香がすかさず食いつく。
「まあ・・・」
「いつよ?」
「明日」
「何処で?」
「何処でって、まあここに迎えには来るけど」
「あの人は?瀬野さん!」
「来るよ」
「マジ?」
「嘘言ってどーする」
「ラッキ〜、挨拶しなきゃ」
なんのだ。
「つーことは、3人で会うんすね。ちょっと安心しました」