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「声と顔は生まれつきだ。どうにもならん」
「あら、なるわよ。ほら、こうやってみて」
早坂さんは口角をクイッと上げて見せた。瀬野さんはうんざりしたようにそっぽを向く。
「こうよ、ほら、やってみなさいって」
「・・・クッ」
今のは、わたしではない。みんな、空舞さんに注目した。
「あなた達、面白いわね。仲が良いのか悪いのかわからないわ」
「凄く、良いと思います」羨ましいくらい。
「あら、あたしと雪音ちゃんには負けるわよ。ね?」
ね?と言われても。そして、近い。
「それで、それ以外というのは?」
「言葉通りだ。大蛇以外にも妖怪はいるだろ。そいつらを見かけたら報告してほしい」
心なしか、瀬野さんの口調が少し穏やかになった気がする。
「それは、探せという意味かしら?」
「そうね、そうしてもらえると尚助かるわ」
「・・・わかったわ。力になれるかわからないけど」
「あたし達じゃ限度があるから。助かるわ」
「空舞さん、無茶はしないでくださいね」
「あら、あなたが言うの?」早坂さんがわたしの頬を小突いた。
「わたしも、ここに居る意味が出来たわ。優子が死んだら、何処か遠くへ行こうと思っていたから・・・ありがとう」
「・・・ありがとうは、こっちですよ。よかった、遠くに行かないでくれて」
「雪音、あなたももっと笑ったほうがいいわ。わたし、あなたの笑顔嫌いじゃないの」
そう言い残し、空舞さんは空へと羽ばたいて行った。
「・・・どこに行ったんだ?まさか、もう探しに行ったのか?」
「どうでしょう・・・うちに来ても、すぐ出て行くので。飛んでるほうが落ち着くみたいですね」
「いいわねー、あたしも空飛びたいわ」早坂さんが空舞さんの飛んで行った方角を眺めながら言った。
「わたしもです」
「高い高いしてあげようか?」
「結構です」
「つれないわぁ・・・次ね」
次ってなんだ次って。不意打ちを喰らわないように用心せねば。