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「雪音、ちゃんと笑うじゃない」
「え?」
「あなた言ってたじゃない。2人の特徴を聞いた時、笑わないほうが正輝だって」
「わー!空舞さん!そーゆう事は・・・瀬野さんゴメンナサイ」
「あら、その通りじゃない。この人、年に3回しか笑わないわよ」
「ほっとけ」瀬野さんはやれやれといった感じだ。
「あなたも美男子なんだし、笑ったほうが好感持てるわよ」
空舞さんの言葉に瀬野さんは怪訝な顔をし、呆れ顔になった。「別に求めてない」
「そう。まあ、ヘラヘラと馬鹿みたいに愛想を振りまく人間よりいいけど」
──今、思った。この2人、ちょっと似てる。
正直者なところもだし、余計な事を語らないのも。なるほど、空舞さんは、人間版瀬野さんなんだ。
「まあとりあえず、座りましょう」
早坂さんは、自分の隣にわたしを座らせた。空舞さんはわたしの膝に移動する。
「ところで空舞ちゃん、あなた、他に仲間はいないの?」
「仲間?いないわ。わたしはずっと1人よ」
「そう。どれくらいになるのかしら?」
「それは、生まれてからということ?」
「ええ」
「・・・正確な年数は、わからないわ。あなた達よりずっと年上なのは確かよ」
「俺達のような人間に会った事はあるか?」
「あ、瀬野さん・・・」
「遊里から話は聞いてる。それ以外でだ」
「言葉通りの意味であれば、あるわ。明らかにわたしが見えている人間は数人いたわね。まあ、向こうはただのカラスだと思ってるでしょうけど」
わたしも、最初に会った時は普通のカラスだと思っていた。普通にみんなが見ているカラス。
「その人以外に、話した事はないのか?」
「ないわよ。わたしから話しかける理由もないし。優子くらいよ・・・向こうから話しかけてきたのは。あ、あなたもね。やっほーって」
それだけ聞くと凄く馬鹿っぽいから言わないでほしかった。
「まあ、そうよね。空舞ちゃんは見た目、普通のカラスだもの。あたし達のように見える人間でもわからないわ」
「そうね。ありがたい事に、うまく溶け込んで生きてきたわ」
空舞さんの言い方には、皮肉が混じってるように聞こえた。