20
「雪音。優子の部屋に花を置いたの、あなたでしょ」
「・・・あ、はい。あまりにも殺風景だったので。といっても、プリザーブドフラワーですけど」
どうしても気になって、優子さんに会いに行ったその日の夕方、出勤前にまた寄ってしまった。
「ありがとう・・・あなたに何か、お礼がしたいんだけど。わたしに出来る事はないかしら」
「いや、お礼をされるような事はなにも・・・あっ、じゃあ・・・」
「なに?」
「お友達に、なってくれませんか」
空舞さんは、クイッと首を傾げた。
「友達?」
「はい。優子さんみたいに、わたしも友達になりたいです」
「・・・それがお礼になるの?」
「はい」空舞さんは、何も言わない。イコール、拒否ってことか。「あの、無理にとは・・・」
「アハハハハ」突然の高笑いに、ギョッとした。「あなた、本気で言ってる?鳥と友達になりたいわけ?」
「・・・はい。ダメですか?」
「本当に、変な人間ね。まさか、そんな寝ぼけた顔にボサボサ頭で、友達になりたいと言われるとは思ってなかったわ」
「えっ、そんなに凄いですか?」確認出来る物がないので、手櫛で髪を直す。
「あなた、やっぱり優子に似てるわ」そう言うと、空舞さんはわたしに背を向けた。「また、来るわ」
「それは、友達になってくれるって事ですか?」
「・・・人間は、友達になるのに口頭の約束が必要なの?」
「え!?あ、いや・・・確認?です」
「本当に変な人間ね」空舞さんはまた言った。「また来るわ・・・友達として」
そう言い残し、空舞さんはあっという間に広大な空へと飛び立って行った。
──これは、友達になったと認識していいんだよね。
優子さん。これからは、空の上から、空舞さんを見守っていてください。こっちでは話せなかったけど、わたしがそっちに行ったら、その時こそ友達になりましょう。2人で空舞さんの話をして盛り上がりましょうね。
どうか、安らかに。