20
「いえ。わたしはちょっと、出来そうにないです」
「中条、お前のナイフをよこせ。小さいので十分だ」
「あ・・・はい」空いているほうの手でボディバッグからナイフを取り出し、瀬野さんに渡す。
「いくぞ」
瀬野さんが心臓にナイフを刺す瞬間を、わたしは見れなかった。次に目を開けた時、女の子は固まり、白くなっていた。
そして、あの大ムカデの時と同じように、塵になって消えていく。
わたしは手の中のその子が消えるまで、離さなかった。
ごめんね。生まれ変わったら、友達になろう。
「ほれ」瀬野さんがナイフをわたしに返した。「一件落着だな。とりあえず、財前さんに報告するか」
瀬野さんが電話をしている間、わたしはブランコに座った。
どうも、胸がざわつく。これで、子供達が安心して過ごせるようになったんだから、良かった。わたし達は当たり前の事をした。頭ではわかっているんだけど。
「大丈夫?」
「・・・はい。ただ、妖怪とはいえ子供だったんで・・・少し複雑です」
早坂さんが頭にポンと触れた。「そうね。あたしも同じよ」
──しっかり、しなきゃな。「ふう・・・楽しかったです、鉄棒もブランコも。なんか、童心に帰りました」
「ふふ、そうね。あたしも見てて面白かったわ」
「今度、勝負しましょう」
「勝負?」
「どっちが遠くまで飛べるか」
「あら、言っとくけど、あたし運動神経はいいのよ?」
「でも、負けない自信があります。負けたら・・・ご飯奢りますね」
早坂さんは、アハハと笑った。「それは、意地でも負けられないわね」
瀬野さんが財前さんとの電話を終わらせた。「よし、帰るか。財前さんがお前達にも宜しく伝えてくれだと」
「いい感じに暗くなってきたわね。さっ、帰りましょうか」
「だから、今俺が言っただろう、帰るかって」
「・・・始まった。同調しただけでしょうが」
「言い方の問題だ」
「はいはい、あたしがわるーございました」
「・・・あの、1つ、お願いがあるんですが」
2人がわたしを見る。「なあに?」
「ちょっと、寄り道してもらってもいいですか?時間は取らせないので」
「オーケー。じゃあ、道案内ヨロシク」