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「雪音、お母さんに、何かおかしい所はなかったか?一緒にいて、様子が変だと思った事は?」
「わかりません」
「ちょっとした事でもいいんだ。何か、いつもと違うと思った事は?」
「貴史、やめろ」
「・・・でも母さん、何かなければ、幸江はこんな・・・」
「お前の嫁は真っ青な顔でトイレに駆け込んでからしばらく経つぞ。見てきてやれ」
「あ、ああ・・・」
───「雪音」
「わかんない」
「いい。何も言わなくていい。言わなくていい」
「わかんないんだよ」
わたしは何してるのか、何処なのか、現実なのか、夢なのか、生きてるのか、全部、わからない。
唯一感じるのは、手の感覚。
おばあちゃん、そんなに強く握ったら、痛いよ。
「おはよう」
「・・・あ」
「寒くない?」
「・・・ごめんなさい、寝ちゃってた」知らぬ間に、首までブランケットがかけてある。
「どして謝るの?」
「わたし、どれくらい寝てました?」
「んー、30分くらいかしら」
「・・・絶対寝ないつもりだったのに」
「その意地はどこからくるの?」
早坂さんの笑った顔を見て、ホッとした。
まさかここでこんな夢を見るなんて、本当、どこまで単純なんだわたしは。
「少し窓開けてもいいですか?」
「どうぞ?」
瀬野さんの返事がないため後ろを見ると、「あ、寝てる」
「最初は座って寝てたけど、堂々と横になり始めたわ」
「アハ。寝てるところ初めて見ました」
「寝てても仏頂面は変わんないでしょ」
「・・・確かに。うなされてるようですね」
窓開けたら起きちゃうかな。と、思っていたら、ウイーンと勝手に開き始めた。
「瀬野さん、暑くて起きないかな」
「起きてもいいわよ。風に当たれば頭もスッキリするわ」
──どういう意味だろう。
もしかして、うなされてた?寝顔見られていたとしたら、凄い嫌なんですけど。
車は順調に進み、景色は徐々に、記憶にあるものへと変わっていく。
「あ・・・」昔、母さんとよく行ったスーパーが見えてきた。
あの頃より、外壁が少し色褪せている。そこに向かって歩く、お母さんと小さな子供も見えた。
わたしもよく、あんな風に手を繋いで行ってたな。おやつは1個だけと言われ、お菓子コーナーでしばらく迷ってたっけ。
懐かしさが込み上げる──でも、そのあと決まって、胸が締めつけられる。