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「あ、うん、そうね。そうそう、財前さんがね、あたし達に話があるみたいなのよ」
「・・・わたしもですか?」
「ええ、だからいつがいいか聞こうと思ったの」
「なんだろう・・・」
「わからないわ。あなたを連れて3人で来てほしいって言われただけだから」
「・・・そうですか」理由がわからない分、少し緊張するけど、財前さんにはもう1度会いたいと思っていた。早坂さんはそれ以上何も言わない。「えっ、話ってそれですか?」
「そうよ」
呆れ顔とは、正に今の自分だと思う。わざわざ会って、言う事だろうか。それも、こんな悪天候の日に。電話なら数分で済むのに。
「・・・わたしは基本、いつでも大丈夫なので2人に合わせますよ。休みの日以外は、仕事前か後じゃないと無理ですけど」
「月曜日がお休みよね。となると、明後日か。時間空けたくないし、ちょうどいいわね、明後日にしましょう。少し遅くても大丈夫かしら?」
「遅い分には問題ないです」
「了解。時間は追って連絡するわ」
「わかりました」
──そして、会話が途切れる。話が終わったなら、帰る。べきだよね。
「じゃあ、わたしは行きますね」
「雪音ちゃん」
「はい」
その先に続く言葉を待ったが、早坂さんは何も言わない。わたしの顔を見つめるだけだ。
「・・・ん?あれ、今呼びましたよね」
「うん」
そして、また無言。──え、なにこれ。どういう時間?
何か言いたそうな顔に見えるが、何も言わない。
「早坂さん?なんですか?」
早坂さんは目を閉じ、こめかみを押さえた。「ごめん、なんでもないわ」
「・・・すっごい、気になるんですけど」
「ごめんごめん」と笑う。「あ、そうそう傘ね」先程投げた傘を拾い、わたしに渡す。
どうも、納得いかない。「なんですか?言いたい事があるなら言ってください」
早坂さんは苦笑いしながらわたしの頭をポンポンした。「ごめんなさい、気にしないで。本当になんでもないのよ」
メチャクチャ気になりますけど!目を細めて早坂さんを凝視した。
「あらん、見つめられてるわ」
「言うまで降りませんよ」
戸惑うかと思った早坂さんの顔が、満面の笑みになる。「いいわよ?好きなだけいてちょうだい」
「・・・帰ります」