2
「そうよ。まあでも、この前の早坂さんの連れのほうが良い男ね。大人だし」
「瀬野さん?」
「あの人、何してるの?女いる?」
「・・・知らない」早坂さん以上に、瀬野さんの事はよくわからない。
「聞いてみて」
「今度は瀬野さんかっ!・・・無理。そーゆう感じでもないから」
「なにが?」
「なんか瀬野さんって、何考えてるかわかんないっていうか、そーゆう事聞ける感じじゃない」
「そこがいいのよねえ・・・あの仏頂面を笑わせてみたいわ。あたしの力で」
目がマジだ。「一真くんも、いずれは社会人になるでしょ」
「ダメよ。今の時点で年下は無理。それ以前に、あの子はあたしじゃないし」
「どゆこと?」
「まっ、言わないでおいてあげるわ。やり辛くなるのも嫌だし」
「なにが?」
「しかし、男は単純の方が好きなのかねえ・・・わかりやすいのが良いのかしら」
「・・・おい、なんのことだ」
「ほら、噂の一真くんよ」
なんの噂?「お疲れ様です。店長と飲みに行く話になったんすけど、2人ともどすか?」
「行きまーす!」春香の挙手のせいで、洗剤の泡がわたしの顔に飛び散る。
「ハハッ、雪音さん、顔凄いことになってる」一真くんは、自分のシャツの袖でわたしの顔を拭いてくれた。
「・・・ありがとう」
「雪音さんも行くすよね?」
「あー・・・わたし今日はちょっと、やめとく」私事ではございますが、生理2日目で、倦怠感MAX。
「えー、また断られた。ショック」一真くんは、あからさまに顔を曇らせた。
「いや!行きたいんだけどね、体調が思わしくなくて」
「風邪すか?」
「いや・・・」
「女の子の日だからね。一真くん、許してあげて」
──コノヤロウ!確かに、生理痛の薬を朝貰ったが!だからと言って、そんなにハッキリ・・・言ってくれて、ありがとう。
誤解されるより、まだ生理痛のほうがいい。
「ああ、そうなんすか。じゃあ、無理しちゃ駄目すね。俺、送って行きますよ」
「え?いや、大丈夫だよ。地下鉄で帰れるから」
「今日、金曜すよ?雪音さん、人混み駄目なんすよね?」
情報源はわかっているから、そいつを睨んだが、本人はしれっとしている。