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「鍵付きの檻でも買おうかしら?」
「なんのために?」
「あなたを監禁するのに」
──そんな真顔で言われても、怖いんだが。
「リードでもいいわね」
「・・・わたしは猛獣じゃありません」
「サイズは小型犬よね。ふふ、可愛いわ」
「わたしを小さいって言うの、早坂さんくらいですけどね」
「そお?」
──・・・さっきまで、押しつぶされそうだったのに、いつの間にか、とても穏やかな気持ちになっている。それは、さっき早坂さんの顔を見た瞬間にも感じた事だ。
本当に、不思議だ。
「やっぱり良いとこね〜。風がなければ最高だわ」
「早坂さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
早坂さんはいつものように優しく微笑み、いつものように、わたしの頭に触れた。
これからも、こうやって、わたしに触れてほしい。
それを言ったら、早坂さんはどう思うだろうか──。