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白い、長袖のシャツだ。「汚しちゃいそう・・・」
「いいわよ。気にしないで」
寒いから、甘える。「ありがとうございます」
わたしが着ると、シャツというよりワンピースになった。長すぎる袖を捲る。フワッと良い香りがした。服の匂いを嗅ぎそうになって、留まる。
入り口にある案内板のマップを見ると、ウォーキングコースは2つ入口があり、1周が約3キロメートルだ。そのコースに沿って、様々な樹木の案内も記されている。さすが、森林公園。
「3キロか。そうでもないな。どっちから行く?」
「繋がってるし、どっちでもいいわよ」
瀬野さんに任せて、後に続く。
少し歩くと、コンクリートの地面から砂利道へと変わった。暗闇に生い茂る木々の中を3人並んで進む。昼間に来たら、森林浴が気持ち良さそうだ。
「雪音ちゃん、離れちゃダメよ」
「はい」
離れるも何も、両サイドをギッチリ固められているから、離れようがない。
聞こえるのは、自分達の足音と、虫の鳴き声だけ。
「・・・ッ、ギャ──ムグッ・・・」大声で叫びかけて、瞬時に口を塞がれた。早坂さんの大きい手がわたしの鼻まで塞ぐ。
「なに!どうしたのっ」早坂さんは気持ち、小声だ。苦しさをアピールすると、顔から手が離れる。
「今、顔に虫がっ・・・」
「・・・虫?怖いのは虫なの?」
「だって、顔に・・・大きいのが・・・」
そうか、このヘッドライトを目掛けて来るんだ。スイッチをオフにする。「2人のライトで十分見えるんで」怒られる前に、言っておく。早坂さんの咎めるような視線がよく見えないのは、暗闇に感謝だ。
それからさらに進むと、広場が見えてきた。
ブランコや滑り台などの遊具が設置されている。
ホラー映画だったら、ここでブランコが勝手に動いたり──なんてね。
「・・・・・・ん?」
「どうしたの?」
「・・・あのブランコ、なんか揺れてません?」
少し近づき、瀬野さんがライトを当てる。やはり、小刻みに動いている。
「ゆ、幽霊・・・?」
「アホか」
「なんで!?妖怪が存在するなら、幽霊もいるんでは!?」
「にしても、変だな。風は吹いてないし、揺れ方が小刻みじゃないか?」