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「どうしていいか、わからなかったんです。今回は何かされたわけじゃないし、警察呼ぶのも大袈裟かなって・・・」

「今回は?」

間髪入れず、早坂さんが食いついた。この口め、余計な事を。「・・・前に、トイレに連れ込まれそうになったことがあって。相手は酔っ払いでしたけど」

早坂さんの顔が険しくなる。「それで、どうしたの?」

「回し蹴りしました。そしたら向こうがよろついて転んで、その隙に逃げました」

「警察には?」

「言ってないです。関わりたくなかったので」

早坂さんはハンドルの上に突っ伏した。「頭痛くなってきたわ」

「でも、仕事帰りじゃないですよ。飲んでて、終電なくなって歩いて帰った時です」

「そーゆう問題じゃないわよ。益々心配になってきたわ・・・」

「そんな重く考えなくても・・・こうやって何もなかったわけだし」

「だ・か・ら、何かあってからじゃ遅いのよ。本当、首輪でも付けたいくらいだわ」

わたしは犬か。「早坂さんって、過保・・・心配性ですよね」

「・・・そお?初めて言われたわ」

「え、マジですか」意外だ。

「ええ、あたし基本的に人に興味ないもの」

「その割には・・・」

「あなたにはそうなのかもね。初めて会った時から、どうも気になるのよ。目が離せないし、面白いし」

最後のが引っかかったが、それより、── 気になるのほうが、気になるんですけど。まあ、深い意味はないのだろうけど。

「そうですか・・・」

「という事で、約束してくれるかしら?」

どーゆう事で?「心掛けますけど、電車逃した時は、歩いて帰りますよ」

「タクシーがあるじゃない」

「そんな身分ではございません」

「タクシー代あげるわよ」

「結構です」

「じゃあ、あたしが迎えに行くわ」

「・・・え」

「遅くなりそうな時はいつでも連絡して」

「・・・なんで、そこまでしてくれるんですか。会ったばかりなのに・・・」

早坂さんは、わたしに聞かれたことが意外だったようだ。いや、キョトンじゃないって。

「わからないわ」

「えええ・・・」

「ただ、あなたの事を守りたいって、強く思ってしまうのよ。迷惑かしら?」

そんなしょんぼりと言われても──・・・「いいえ」



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