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電話を終えて2度寝の姿勢に入り、あっ、と思い出した。着信履歴を確認する。
1番上に春香の名前があり、その下に不在を示す赤い文字で、「オネエ・・・・・・えっ!」
思わず飛び起きた。
最初の電話は、あの人だったのか。そういえば、昨日メールが来てたんだ。起きたら返そうと思って、すっかり忘れていた。

しばらく、考えた。電話が来たから、電話で返すべきか──。でも、なぜか気が重い。
あの夜の事は、出来るだけ考えないようにしていた。"この類"の事は、脳が勝手にそうなってしまうんだ。

とりあえず、メールの画面を開く。おはようございま──と打ちかけて、削除する。
こんにちは。すみません、昨日は飲んでいてメールに気づきませんでした。今日起きたら返そうと思ってたんですが、今まで寝てい──メールの画面を終了し、勢いに任せて電話をかけた。

コールが1回、2回 ──「もしもし雪音ちゃん?」

「あ、もしもし」声が小さくなる。

「良かった、無事だったのね!」

「・・・無事?ですか?」

「メールも返ってこないし、寝てるのかなと思って待ってたんだけど一向に連絡来ないから、もしかしたら食べられちゃったのかもって心配してたのよ」

「食べられる・・・えっ、わたしが!?」

「そうよ、あんな事があったばかりだし、嫌な方にばっか考えちゃったわ」

あんな事を思い出して、少し身震いする。

「だから言っただろう、考えすぎだって」電話の先から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「瀬野さんですか?」

「え?ああ、そうよ。うるさいわね!聞こえてるじゃない!」微かだが、いらっしゃいませという声が聞こえた。お店にいるんだろうか。「でも良かった、安心したわ。ところで雪音ちゃん、今って何してる?お昼休みかしら?」

「あっ、いえ、今日は休みで家にいました」今まで寝てたとは言うまい。

「あら、そうなの。んー、じゃあちょっと出てこれる?」

「・・・えっ!今からですか?」

「うん、予定があるなら別日でもいいわよ」

予定があるなら、2度寝をしようとはしない。「何も、ないです」

「あら良かった。じゃあ、どうしようかしらねえ」

「あの、ちょっと待ってもらってもいいですか?寝起・・・何も準備してなくて」

「もちろんよ、急でごめんなさいね。場所はメ ールするから、そこに来てくれるかしら」

「わかりました」








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