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「ゴメンね、押し付けちゃって」
「ん?あのじさまの事?」
今度はじさまか。「うん、わたしも免疫つけないと」
「何言ってんの。あーゆーのに免疫つける必要なんてないのよ。自分は客だと思って何処までもつけあがるんだから。ったく、女に触りたいなら違う店行けっての」
この女の凄いところは、正論を述べるがそれを押し通さないところだ。裏ではボロクソ言ってるけど、どんなお客さんにも嫌な顔ひとつせず、何があっても冷静に対応出来る。
こういうのを、客商売の鑑って言うんだろうな。
「それに、アンタはすぐ顔と態度に出るから。あとでフォローするほうがめんどいのよ」まあ、こーゆー奴だから、本人には言ってやらないが。
「また来るよねぇ、絶対」
「来るわよ、アンタが居る限り」
「・・・わたしが?なんで?」
「なんでって、アンタのこと気に入ってるからに決まってるじゃない」
自分で自分があんぐりとしているのがわかる。「はあ?意味がわかんないんだけど」
「最初来た時から、アンタの事ずっと目で追っかけてたのよ。気づいてないかもしれないけど」
気づくわけがない。というか、忙しすぎてそんな余裕はない。「いやいやいや・・・やめてほしいんですけど」
「ほんと腹立つわ。なんでアンタなんだろ。あたしを差し置いて」
「そこかい」
「とにかく、気をつけたほうがいいわよ。あーゆうタイプは徐々にエスカレートしてくから。上手くかわせないなら距離を取ったほうがいいわ」
この説得力は、培ってきた物なのか ──。なんにせよ、悪寒が走った。