バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ


「未来ちゃん」目が合い、手をあげたが、すぐ逸らされた。

── ・・・ん?

未来ちゃんの席は斜め2つ前だ。席に着いた未来ちゃんの元へ向かう。「おはよう未来ちゃん」

「おはよう」未来ちゃんは教科書を机にしまいながら返事をするが、こちらを見ない。

「未来ちゃん、元気だった?怪我はもう大丈夫?」

未来ちゃんは何も応えず、やはり、こちらを見ない。明らかにいつもと違う様子なのがわかった。

わたしの頭にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

「おはよー!」そこで、もう1人の仲良くしている友達、桃華(ももか)ちゃんが教室にやってきた。

「おはよー」言ったのは、未来ちゃんだ。
桃華ちゃんの席は入り口側の1番前で、未来ちゃんは足早に桃華ちゃんの元へ向かった。まるで、わたしから逃げるかのように。

徐々に、鼓動が早くなるのを感じた。
わたし、無視されてる?

──なんで?
思い浮かぶ、全てのことを考えた。わたし、未来ちゃんに何かした?


それはその日、ずっと続いた。
数人で話したり、教室を移動することはあったけど、未来ちゃんだけは、わたしを見なかった。まるで、わたしがそこに居ないかのように。
それでも、わたしはずっと未来ちゃんを目で追っていた。なんで?と心で問いかけながら。


そして、それは次の日も続いた。その次の日も──。
デジャヴを覚えた。それと共に納得した。
ああ、未来ちゃんはわたしに会いたくなかったんだ。毎日未来ちゃんの家に行っては、具合が悪い、今ちょうど寝たところだ。
その意味が、やっとわかった。


日に日にモヤモヤが募っていき、わたしの精神状態も不安定になっていく。
未来ちゃんに聞きたい。でも、聞くのがこわい気持ちもある。なにより、2人きりになるのを避けられてる為、そのタイミングがない。

そんな状況が続けば、一緒にいる子達も何かおかしいと気づくものだ。

「どおして未来ちゃんと雪音ちゃんは話さないの?」ある日の昼休み、それは唐突だった。

わたしが返答に困っていると、未来ちゃんが言った。「話してるよ」一言で終わった。


── ウソつき。
哀しみ、虚しさを通り越して、憤りを感じた。その憤りが、わたしを動かす。

わたしは未来ちゃんの手を掴み、教室を出た。

しおり