第88話 デカすぎる女の個人的な怒りの矛先
「アメリアさん……意外と婚活とかしてます?実は愛を一番欲してるのはアメリアさん自身じゃ無いですか?」
ここで冷静に戻ってツッコミを入れるのが自分の役割だと察してきた誠はそう言ってみた。
急にアメリアは天を仰ぎ、自嘲気味な笑みを浮かべて誠に流し目を向けた。
「豊川市役所とか
「やっぱり?」
誠の予想通り、でかすぎる女、アメリア・クラウゼ少佐はモテなかった。
アメリアの『モテない宣言』は続いた。確かにあの『女芸人気質』と『糸目』と言うツッコミどころが気になる男はアメリアには近づいては来ないだろう。
「でも……モテないことによる『恒久平和』は要りません……僕はまだ夢は捨てきれていないんで」
誠は少しは『モテたい』と思っているのでアメリアの理想には賛同できなかった。
「すでに誠ちゃんと『愛』が芽生えそうな『女子二名』と『野郎数名』の目星はついているわ。私達は『愛を破壊する平和の使者』として誠ちゃんの『愛』が絶対成就しないようにがんばるから!」
『女子二名』との『愛』が芽生えるかもしれない。アメリアの言葉に誠はつばを飲み込んだ。
「僕を好きな人がいるんですか?この『特殊な部隊』に」
誠はアメリアに縋るような瞳を向けて尋ねた。誠はモテたかった。
「女二人は境遇から見て誠ちゃんに同情しそうだから……できるだけ誠ちゃんと遭遇しないように『部長権限』を駆使して会わせないようにしているの」
非情なアメリアの言葉に誠は言葉を失った。
完全な『権力乱用』で誠の『愛』を粉砕するアメリアの意思にこの遼州が『特殊な星系』であることを再認識した。
「あと他に整備班の技術下士官の『野郎数名』がその候補になりそうなんだけど……」
アメリアがニコニコ笑って誠に話しかけた。
「いいです、僕にはそっちの趣味は無いんで。BLアニメ好きのアメリアさんとは違います!」
すげなく断る誠だが、こんなことで引き下がるアメリアではない。
「きっと、いい男がつなぎを着て『やらないか』とか言ってくるんじゃない?面白そう」
誠には一名、整備班員のつなぎを着たいい男に心当たりがあった。
「島田先輩ですか?」
確かに『いい男』であり、最後に見たときはつなぎを着ていた。
「はずれ!島田君は『純情硬派』が売りの『愛と性の完全分離に成功した宇宙初の存在』だから、サラ一筋なの!うらやましいけどあれはあれで結構笑えるわよ。馬鹿馬鹿しくて」
誠は暴力をかさに島田に欲望のままに蹂躙されて何かに目覚める危機から救われたという事実にほっと一息ついた。
「いいです。遼州人である自分が恥ずかしくなったんで、席に戻ります」
アメリアの馬鹿話に疲れ果てた誠はこういって『モテない教祖』、アメリアが部長を務める『運航部』の詰め所から逃げ出すことにした。