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第81話 1911(ナインティーンイレブン)

 
挿絵


「それでは私の銃を……」

 カウラの言葉が聞こえて誠が振り返ると、カウラの左脇腹に下がる武骨な銃に手を伸ばした。

「あのー……カウラさん。それ……『ガバメント』ですね」

 誠は珍しく見覚えのある銃をそう呼んだ。

「『コルト・ガバメント』はこの銃の販売を最初に始めたコルト社の商品名だ。正式には19(ないんてぃーん)11(いれぶん)と呼ぶ」

 カウラはそう言ってホルスターから銃を引き抜いた。

19(ないんてぃーん)11(いれぶん)。単純な構造で優れた銃だったからこいつもコピーが一杯で回ったからな。まあこいつのはメーカー不明のスライドとアメリカ海兵隊のお古のレール付きフレームで作ったニコイチ、サンコイチモデルだからな」

 かなめはそう言って呆れたような表情で銃を構えるカウラを見上げた。

「こいつの使っている45ACP弾はストッピングパワーに優れている。室内戦闘で刃物を振り回している相手や薬物でトリップしているターゲットにもその打撃力で反撃を阻止することができる」

 カウラはそう言って一発だけターゲットに発砲した。

「ストッピングパワーなんて40S&(すみすあんど)(うぇっそん)弾で十分だって言うの……まあ確かに薬でラリってる相手ならアメリアの9パラじゃあ貫通するだけで反撃されるのは事実だけどさ」

「かなめちゃん……私は一撃で額をぶち抜くから大丈夫よ」

 そう言ってアメリアは珍銃P7M13を抜く。かなめは呆れたようにその様子をうかがっていた。

 かなめとアメリアの雑談を聞きながら誠はカウラが安全装置をかけてそのまま銃をホルスターに収める様を見守っていた。

「なんで連射しないんですか?カウラさん」

 先ほどまでの銃自慢の二人に比べてのあっさりとしたカウラの反応に戸惑いながら、誠はカウラにそう尋ねた。

「西園寺じゃあるまいし弾を無駄にしたくない。うちの予算は少ないんだ」

 カウラはそう言って借りてきた猫のようなおとなしさの誠に笑いかけた。その表情はいつもよりも冷たく、まるで機械のような印象を誠に与えた。

「カウラちゃんは私達『ラスト・バタリオン』の中でも後期生産型だから……銃を持つとテンションが変わるのよ……それにしてもカウラちゃんたら妙に冷静に落ち着いちゃって。まあ戦場では落ち着きが何より大切だから」

 アメリアのフォローに誠は静かにうなづきながら誠はカウラを冷ややかな目で見つめていた。


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