バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

バケモノ

私は普通に地下街を歩いていただけだった。いきなり、すれ違いざまに女子校生が悲鳴を上げて、私を指差した。
「バ、バケモノ」と。私はポカンとするだけだったが、その女子校生の悲鳴から、何か恐怖が広がるようにその地下街にいた人たちが、私におそましいものを見たというような視線を送り、ある者は悲鳴を上げ、ある者は私に背を向けて逃げ出し、さらには、「死ね、バケモノ」と襲ってくる人までいた。当然、正当防衛として、反撃しながら逃げた。襲ってくる者たちをなぎ倒しながら、地下街の隅の方のトイレに逃げ込み、ようやく落ち着く。鏡のあるトイレの洗面台に近づく、ハッとして、生々しく血で汚れていた自分の両手を洗う。その鋭い指先の爪をしっかり使って反撃したから、爪の間に生々しく肉片が残っていた。気が付けば、全身が返り血で汚れていた。顔の半分近い、大きな一つ目に血が入らないように顔の血をぬぐう。私から見れば、二つ目の彼らの方がバケモノなのにと思うが、とにかく、彼らに見つからないようにこの地下街から逃げ出さないと。

しおり