検温ステーション
その感染症の流行が、ワクチン接種者増加に伴い収束すると思われた頃、政府は、感染力が強い新しい変異種が誕生したと、少しでも熱が高いと判断された人を強制的に隔離できる法律を制定し、駅など人の出入りの激しい場所に検問所のような検温所を設置し、少しでも熱があるとされた者を次々と囚人のように拘束し始めた。俺も、ちゃんと自宅を出るときに体温計で平熱だと確認して家を出たのだが、その検温所で引っ掛かり、警察官に強制的に護送車に乗せられた。
「俺の体温は正常だ、おまえらの体温が低すぎるだけだろう爬虫類エイリアン!」
その男は、俺より先に護送車にいて、外にいる警官たちに向かって怒鳴っていた。
「エイリアン?」
俺と目が合ったおっさんが、口早に説明する。
「変温動物の爬虫類型の宇宙人が地球を侵略に来たんだ。やつらは、この感染症を利用して、恒温動物の俺たち人間を区別し、収容所に送り込み、地球を乗っ取るつもりなんだ」
「は? まさか…」
「じゃ、あいつらをよく見て見ろ、マスクも何もしていない。つまり、移るようなウィルスなんて存在してないからだ」
言われて護送車の窓から外の連中を観察して見ると、確かに感染力が高い変異種が出たという割に、感染を恐れているようには見えなかった。
そうして、ほとんどの地球人が捕まった頃、彼らは偽装した皮膚を剥ぎ、薄気味悪い爬虫類特有のごく彩色の肌をさらした。