バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

料理下手な妻

彼女は、本当に料理が苦手だった。だが、食べられないほど、無茶苦茶な味ではなかったので、結婚してから我慢して食べ続けた。
だが、さすがに何年も続くと我慢の限界が来て、つい妻を厳しく怒鳴り、その日の夕飯は家では食べず、外で食べることにした。どうせならと、普段は入らないような高い店に入った。が、口にしてみて、あれと思った。
妻の料理よりも不味く感じたのだ。俺は首を傾げながら、こっそり、スマフォで、その店の評価を見た。悪いことは書かれていなかった。とりあえず、その店の料理を食べきり、他の飲食店、行列ができるラーメン店や、いつも人が多くて、入店を待たされる回転ずしなど、いろんな店を回ったが、どこの店も不味かった。
俺の舌が、おかしいのではと気づき、妻の料理が不味かったのではなく、俺の舌の方がおかしかったんだと慌てて家に戻ってそのことを妻に伝えようとしたら、妻は首をつって死んでいた。
残された遺書から、一生懸命作った料理をけなされたことがよほどショックだったようだ。俺に内緒で実家に電話して、俺が好きだった料理を母から色々聞いていたらしい。
俺は、その後、何を食べてもすべてクソ不味く感じ、妻の料理みたいに完食できず、みるみるやせ細っていった。
このままだとやばいなと思いつつ、点滴を拒否し、早く餓死して妻の元へと思うようになった。

しおり