バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

俺の行動

「落ち着いたみたいね」
と言う彼女に頷くと、今度はこちらから質問を投げかけることにした。
どうして俺のことを助けたのか?
その理由が気になったからである。
そうすると、彼女は答えたのだ。
それは単純に俺の力になりたいと思ったからなのだと教えてくれた後でこう続けたのである。
「実はね、私も貴方と同じ境遇の人間なのよ」
と言いながら、自分の生い立ちについて語ってくれたのだ。
その話はとても興味深いものだったため興味深く聞いていたのだが、
やがて本題に入ると真剣な表情になって語り始めたのである。
その内容は以下の通りだ。
まず初めに驚いたのは、彼女もまた日本人であるということだ。
さらに驚くべきことに、彼女の名前は真鍋有紗という名前で年齢は18歳なのだという。
「えっ!?」
思わず声を上げてしまった俺に対して苦笑しながら謝ってくる彼女だったが、
それ以上に衝撃的だったのは彼女の出身世界であった【リラリオ】というところは魔法が存在していて、
魔物や魔獣なども普通に生息しているというのだから驚きを隠せなかった。
だがその一方で納得がいったこともある。
何故ならば、彼女が使っていた言語は明らかに日本語ではなかったのだが、
すんなりと理解できたうえに読み書きも出来たことから、
おそらく魔法の影響によるものだろうと思ったのだ。
つまり、この世界で使われている言語を強制的に脳内に刷り込まれた結果、
日本語のように聞こえるようになったというわけである。
そんなことを考えつつも彼女の話を注意深く聞いていると、最後にとんでもないことを言われてしまったのだった。
そう、彼女の目的は俺のお嫁さんになることだというのだから驚いてしまったものの、
不思議と嫌な気分にはならなかったので了承することにしたのだった。
それからしばらくして、俺たちは旅立つことになった。
目的地はもちろん魔王城なのだが、その前にまずは仲間集めをしなければならないと考えたのだ。
というのも、俺と有紗さんだけでは流石に戦力不足だと感じていたからである。
特に回復役の不在は大きな痛手となるため早急に見つけなければならないと思っていたのだ。
そこで、二人で話し合った末に候補に挙がった人物が一人だけいたのだった。
その人物は帝都にいるという噂を耳にしたのである。
何でも、帝都で冒険者をしている最中、魔族に襲われているところを偶然通りかかった帝国の騎士団に助けられ、
そのお礼として滞在していた宿に呼ばれ一晩を過ごした後に交際を始めたというのだ。
しかも、その相手というのがよりにもよって皇帝の姪である王女の一人だというから驚きである。
ちなみに、その人物の名はサラ・アルデバランといい今年で19歳になるそうで、
その美貌もあって帝国内ではかなり有名な存在であるらしい。
そんな話を聞いた俺達は早速行ってみることにしたのであった(とは言っても、実際には空を飛んで行ったんだけどね)。
そして到着してみると早速中へと入っていき目的の人物を探し出すことに成功したのだった。
だがその姿を見た時、俺は言葉を失ってしまったのである。
というのも目の前に現れたのはどう見ても中学生くらいの年齢にしか見えなかったからだ。
しかも童顔ということもありとても可愛らしい顔立ちをしていたこともあって一瞬ドキッとしたほどだったのである。
しかしながら、当の本人は全く気にする様子もなく平然としていたので、気を取り直して声をかけることにしたのだった。
そうすると、こちらを見て不思議そうに首を傾げながらも丁寧に挨拶してくれたので、
こちらもそれに応えるように挨拶を返した後、早速用件を伝えることにしたのである。
そうすることで彼女はようやく合点がいった様子で頷きつつ答えてくれたのだった。
なんでも彼女は元々貴族令嬢だったらしいのだが、ある日突然攫われてしまい奴隷として売られてしまったのだそうだ。
その後は地獄のような日々が続き、何度も死にたいと思ったそうだがその都度仲間の支えによって生き長らえてきたのだという。
その中でも一番仲の良かった相手が盗賊団の首領だったというのだから驚きである。
そんな彼女に対して俺は提案したのだ。
一緒に冒険しようじゃないかと。
そうすると、彼女は喜んで受け入れてくれたので一安心したところで自己紹介を行ったのである。
そして互いに名前を教え合ったところで、これからどうしようかと考えていたところ、
ちょうどサラさんも帝都を離れるところだったようで好都合だと思った俺は即座に勧誘することにしたのだ。
その結果、最初は戸惑っていた様子だったものの、最後には承諾してくれたのでホッと胸を撫で下ろしたのである。
その後、色々と話し合ってみたところ意外にも意気投合することになり、あっという間に仲良くなってしまったのであった。
そんな中、突然サラさんがこんなことを言い出したのだ。
自分は一度死んでしまっている身だから気にしないでほしいと言いつつも
どこか悲しげな表情を浮かべていたのを見た俺は咄嗟に抱きしめたのだが、
それが逆効果だったのか泣き出してしまったためオロオロしてしまったりもしたのだが、
最終的には泣き疲れて眠ってしまった彼女を抱き抱えながらその日は眠ることにしたのであった。
翌日になって目を覚ました彼女は、昨日のことを思い出したのか顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、
その様子も可愛かったこともあり思わず見惚れていると、余計に恥ずかしくなってきたのか顔を背けてしまったのであった。
そんな様子も微笑ましく思えた俺は自然と笑みが溢れてしまっていたのだが、
それを見た彼女は益々恥ずかしそうにしながら俯いてしまったのである。
その様子を見ていた俺も恥ずかしくなってきてしまったせいでお互いに黙り込んでしまい気まずい雰囲気になってしまったが、
それでも一緒にいるだけで幸せを感じることができたおかげで寂しさを覚えることはなかったのである。
それからしばらくは平穏な日々を送っていたのだが、ある時を境に状況が一変することとなった。
その日、俺たちはいつものように冒険者ギルドへ依頼を見に来ていたところ、
たまたま良さそうな仕事があったので受注することにしたのだ。
その内容は、近くの森に住み着いたドラゴンを倒して欲しいというものであったのだが、
どうやら最近被害が相次いでいるらしく困っていたようなので引き受けることにしたのである。

しおり