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奇妙なバス

 私の自宅の、最寄り駅南口のロータリーからは、時おり奇妙なバスが出る。

 奇妙なのは見た目ではない。ごく普通の、鉄道会社が併営するバス会社のバスである。

 では何が奇妙なのかと言うと、その行き先だ。車体の前後左右の窓の上部に設置された電光掲示板には、およそ信じられない文字が表示される。

『アマゾン』

 私が住むのは南米でもブラジルでもない。まして熱帯雨林などではない。

 そもそも表示されている文字はポルトガル語ではなく日本語である。カタカナである。

 初めてそのバスを目にした時は二度見、いや三度見はしただろう。

 いったいこのバスは何処へ行くのだろうか?


 私がその謎の答えを知ったのは、それからしばらく経ってからのことだった。

 Amazonジャパン・フルフィルメントセンター

 そう、世界最大級の通販サイトAmazonの、商品を発送するための配送センターが、いつの間にか地元に出来たのだ。

 バスはそこの従業員の、通勤のための物だったのである。

〈了〉

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