第六十九話 「客」
城下町の
「貴様ぁ、覚悟出来てんだろうなぁ? 生きてまた
三人組の男の一人が、ニヤニヤとしゃらくの顔を覗き込む。
「しゃらくせェ! おれァ蕎麦大好きなんだ! てめェらこそ覚悟出来てんだろうなァ? 食いもン
しゃらくも腕を
「貴様らも
三人組の今まで黙っていた男が口を開く。男は、他の二人より背が高く身なりも
「フフ。そりゃどうも」
ツバキがニコリと
「こいつそんなに派手髪か?」
派手髪のしゃらくが、後ろのツバキを指差して尋ねる。目の前の三人はキョトンとしており、後ろのウンケイはやれやれと呆れ、ツバキはくすくすと笑っている。
「・・・まあいい。貴様らも訳あって、こんな下らぬ徴兵に参加してるんだろ? それなら命は惜しいよな? 俺達は今、腹減って手加減出来そうにねぇんだ。・・・そうだな。貴様の指を一本
中心の男がしゃらくを指差し、ニヤリと笑う。しかししゃらくは全く
「てめェナメんなよ!? おれ達だって久しぶりのまともな飯だったんだ! こっちも手加減出来ねェなバカ野郎!」
しゃらくの
「・・・上等だこの野郎。どうやら死にてぇらしい。片付けろ」
中心の男がそう言うと、前にいた二人が、ニヤニヤと笑いながら腰の刀を抜く。
「おれ一人で充分だぜ」
しゃらくがニヤリと笑い、二人に向かって行く。
「ちょ、・・・ま、待て! ・・・なぁ、一旦話し合おうじゃねぇか! ・・・まぁなんだ! 今回の事はお互い水に流すってのはどうだ!?」
「フッ。そりゃあ無いだろう」
男の態度に後ろのツバキが笑う。隣のウンケイは黙って男を睨んでいる。
「ふざけんな! おれはお前みてェのが大嫌いなんだ!」
しゃらくが
「待てと言ってんだ! いいのか? 俺は手打ちにしてやるって言ってんだぜ?」
男は腰が
「くっくっく。俺は
男がニィッと笑う。しかし案の定、しゃらくは何の事か分からずポカンとしている。
「
すると後ろのツバキがポツリと
「・・・
ウンケイが自分の
「おうよ。
男が、自分の右腕に刻まれた荒波を叩いて笑う。
「ンなの知らねェよ!
しゃらくが顔を
「・・・
すると後ろにいたツバキが、ツカツカと男に近付いていく。
「おいおい! 話聞いてんのか? それ以上近づくな!」
男は
「
ツバキがそう呟きながら、腰の刀を抜く。
「くっ! 死ねぇ!!」
男が刀を振りかぶる。
「・・・へ?」
男が目を丸くする。ツバキは刀を
「・・・一つ聞く。この男に見覚えは?」
ツバキが
「・・・し、知らねぇよ」
男が目の前の似顔絵を見て呟く。
「よく見ろ。思い出せ」
ツバキがドスの
「・・・し、知らねぇ。本当に知らねぇんだ!」
男が震える声で首を横に振る。ツバキは、男の顔を冷たい目でジッと見つめる。
「・・・そっか。じゃあ行っていいよ」
ツバキがニコリと微笑み、似顔絵を懐に
「・・・そうそう。上の連中に
ツバキが横目で睨む。男は慌てて立ち上がり、刃の無くなった刀を放って逃げて行く。ツバキの
「・・・ツバキお前、
ウンケイがツバキに尋ねる。
「ちょっとね」
ツバキは、いつも通りの穏やかな笑顔を向ける。
「そうか。人の人生色々だ」
ウンケイがそう言うとニッと笑う。
「お前やっぱ強ェんだなァ。今の
「フフ。ありがとうよ」
ニヤニヤと笑ったしゃらくが、ツバキに肩を組む。
「お見事!」
すると突如、蕎麦屋の店内から男の大声が聞こえる。外にいるしゃらく達は
「いやあ、お見事お見事。全て見させて貰った。あなた方は賊共からこの店を見事に救った。まさにこの店の救世主、即ちこの町の救世主だ」
手を叩きながらツカツカと歩いて来るのは、初めから店にいた客の男で、端正な顔立ちに綺麗な身なりをしている。
「誰だァあんた?」
「これは失礼。私はこの町で商人をしている“リコウ”と申します。あなた方の
リコウと名乗る男は、深々とお
「おれはしゃらく。こいつがウンケイとツバキ、そンでこいつがブンブクだ」
しゃらくがそれぞれを指差して紹介する。ウンケイとツバキはリコウに軽く
「皆様どうぞ宜しく。ところで、君達は今回の徴兵に参加されてると耳にしたが・・・」
リコウが小さな声でヒソヒソと話す。
「あァそうだ」
「そうでしたか。それでは町人達が
リコウが深々と頭を下げる。
「辞めてくれ。ここの町人達が俺達を嫌うのは、事情を聞きゃあ当然だ。・・・なぁあんた、龍神の事を聞少し聞かせてくれねぇか?」
ウンケイが尋ねると、顏を上げたリコウはニッと微笑む。
「
完