第六十七話 「不屈」
「頼む! あの子を
シカが、
「・・・え? どうしたんだ?」
しゃらくが目をパチクリさせる。
「あの子狸だよ! 仲間なんだろ!? 頼む! モフモフさせてくれ!!」
見た事のない
「ゔえ! ぐ、ぐるじぃ・・・!」
「はぁはぁはぁ・・・!!」
息を荒くしたシカが、目の間にいるブンブクに、目を見開きゆっくりと手を伸ばす。ブンブクはその異様な様子に
「・・・!!!」
「かわいい! モッフモフ! ブンブクちゃんかわいい! スーハースーハー! かわいいかわいい!」
「まァいっか。二人とも嬉しそうだし」
しゃらくがニッと笑う。ウンケイとツバキもやれやれと笑っている。すると徴兵達が集められた外広場に、城内からアドウと三人の
「なんか強そうなのが来たなァ」
しゃらくが、向こうに立つ三人の側近を見てニヤリと笑う。
「あれは味方なんだよな? まるで敵を
ウンケイもニッと笑う。
「あの三人はアドウの側近だ。あのデカいのが“
ツバキも腕を組んでニヤリと笑う。
「やけに詳しいな?」
ウンケイが尋ねると、ツバキは再びニッと笑う。
「ここらじゃ有名だぜ? それに、情報は力だよ」
ツバキの言葉にウンケイが眉を
「・・・」
一方、先程まで嬉々としてブンブクを撫で回していたシカは、ブンブクを抱いたまま、向こうのアドウ達をキッと睨んでいる。ブンブクは不思議そうにシカの顔を見ている。
「お前達! よくぞ生き
アドウが、外広場に集まった徴兵達の前で口を開く。
「集まって
そう言うとアドウがニィッと笑う。
「この城で!? あの化け物をこの城に呼ぶのか!?」
徴兵達がざわつく。
「へへ。あのおっさんも
しゃらくが笑う。
「そりゃそうさ。奴の通り名は“
ツバキの話を聞き、しゃらくの耳がピクリと動く。ウンケイも反応し、アドウの方を見る。兵達の前に立ち、
「・・・確かに、あのおっさんなら
ウンケイが笑いながら、しゃらくを見る。
「わっはっは。そうだな」
しゃらくが笑う。
「・・・もしや君達も
「それだけじゃねェ。おれ達は
「!!?」
しゃらくの言葉にツバキが目を丸くする。しかし、しゃらくの表情に一切の曇りはなく、隣のウンケイも同様である。その様子に、ツバキは体の力が抜ける。
「・・・そうか。それは大きな野望だな」
ツバキが
「お前も来るか? ツバキ」
しゃらくがツバキを向き、ニコリと笑う。
「・・・フフ。それは楽しそうだね。・・・でも
ツバキはしゃらくの方を向かず、真っ直ぐ前を
「そっか」
しゃらくがニッと笑い、前を向き直る。
「・・・しかし、いいのか? こんな素性の知れない男を誘ったりなんかして。君の野望には
ツバキが前を向いたまま、しゃらくに尋ねる。
「うん。だからお前を誘ったんだけど?」
すると、しゃらくは不思議そうな顔で、ポリポリと頭を
「わっはっは。な? 馬鹿だろ?」
傍にいたウンケイが、二人のやり取りに笑っている。
「・・・やれやれ」
「・・・フッフッフ。ますます楽しそうに思ったよ、君達の旅。まあ
「あァ!」
そんな三人の一方、シカはブンブクを抱いたまま、アドウ達を睨んでいる。
「・・・カゲ
ポツリと呟くシカの視線の先にいるのは、アドウ三側近の一人で
「だってよ
リキ丸が
「くっくっく。そりゃあ都合がいい。こちとら
「はは。そうだな」
二人が怪しく笑う。二人の視線の先にいるのは、アドウ三側近の一人、“
「以上! 討伐は
話し終えたアドウが、
「・・・少しは
ソンカイが後ろを振り返ると、一人の“
「はい。
忍が顔を上げぬまま答える。
「そうか。下がってよい」
「
ソンカイが再び外を向くと、忍はサッと姿を消す。するとソンカイが、外を眺めながら不気味にニヤリと笑う。
完