第六十六話 「恐ろしい策士」
「うわぁぁぁぁ!!!」
突如
「・・・」
先程まで
「・・・奴は天候だけでなく水まで操るのか・・・?」
残った兵達が、今目の前で起きた信じ
「・・・ギリッ」
大将のアドウが、周囲に聞こえる程の
「おのれ・・・。それで俺に勝ったつもりか?」
アドウはそう呟くと、
「いいかお前ら! 今の急流は恐らく、何処かに溜めていた水を一気に放出したものだ! という事は、この先にそれをした者がいるという事だ! 奴を
アドウが洞窟に入って行く。その姿を追い、残った兵達がおぉ!と声を上げながらアドウに続く。
「おれ達も行こうぜ!」
しゃらくも続いて洞窟に行こうとする。するとウンケイがしゃらくの肩を
「待て。俺が思うに、これは完全に負け戦だ」
ウンケイの言葉にしゃらくが驚く。
「同感だね」
後ろでツバキも
「多分だが、この洞窟にもう敵はいねぇ。俺達がここに来るように仕向けて、ここに到着する時を
ウンケイが
「この為に町人を町へ行かせていたんだと考えると、恐ろしい
ツバキもウンケイの意見に同調する。
「え、じゃアあのおっさん達にも教えてやらねェと・・・」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
しゃらくが立ち上がった瞬間、洞窟の中から男達の悲鳴が聞こえる。
「うわァァ!!」
やがて炎はすぐに消え、洞窟からは黒い煙が
「・・・おいおい、本当に龍なんじゃねェのか?」
しゃらくが目をパチクリ
「・・・はは。かもな」
ウンケイもこれには苦笑いを浮かべている。
「・・・龍だ。やはり奴は龍神なんだ!!」
後方にいた兵達は、暗い夜の中でも分るほど顔を真っ青にして、悲鳴を上げながら転がるように山を下っていく。
「・・・洞窟の中に油でも
ツバキも苦笑いを浮かべながら呟く。すると洞窟の中から、
「おっさん!」
しゃらく達が慌てて駆け出す。
「・・・
「おっさん!
「くっ・・・!!」
龍神討伐に向け集められたアドウ率いる討伐軍は、この日、敵の圧倒的な力に
*
城内最上階の大広間にて、アドウが傷だらけの体に、医者から包帯を巻かれながら顔を
「・・・今回失った兵はおよそ百二十。ちと痛かったですな」
三人の侍の真ん中の男が、顎に生えた長い髭を触っている。その男は“くも
「あぁ全くだ。お前を連れて行きゃ良かったぜ」
アドウが、ばつが悪そうにくも
「わしが行ったとて、何も状況は変わらんでしょう。さて、どうしたものか・・・」
くも八が再び長い髭を触る。その左隣で、アドウ同様悔しそうに顔を
「今度は、奴をこちらに呼び込むのはどうでしょう?」
カゲ
「奴をこちらに
包帯を巻き終えられたアドウが、カゲ
「確かにな。奴の危険度は、今回の件で明らかとなった。前回も含めれば、二百近くの兵を失った。まあそんな物はまた
そう言うとアドウがくも
「・・・一理ある。奴をこの城で迎えるのは、万一を考えるとあまりにも危険故、反対しておったが、もはや止むを得んな。だが奴をどうやってこの城へ誘き出す? 簡単に敵地へ来るとは思えんが」
くも
「カゲ
アドウも眉を
「はい。お任せを」
*
翌朝、城内の外広場に、生き残った
「ま、待てよ! 何もしねェって! おれ達仲間だろ? 仲良くしようと思って・・・」
しゃらくは両手を上げて苦笑いする。
「不要だ。俺は
女兵は刀から手を放し、
「そんな事言わずによォ。おれはしゃらく。あんた名前は?」
「あっちへ行け」
二人の様子を、少し離れた所でウンケイ、ブンブク、ツバキが眺めている。
「・・・
ツバキが呟く。ウンケイとブンブクは、やれやれと肩を落とす。
「ってか、あんた女だろ? こんなとこで何してんの?」
しゃらくが、周囲に聞こえないよう小声で尋ねる。女兵は驚き、向こうのツバキを睨みつける。ツバキは両手を上げて苦笑いする。
「違ェよ。ツバキから聞いたんじゃなくて、おれは匂いで分かるんだよ。鼻が良いから」
「え、キモ」
女兵が、しゃらくに
「・・・私は“シカ”。訳あってここにいる。この事は
シカという女兵が呟く。するとしゃらくは、落ち込んでいたのが噓のように、パアッと表情が明るくなる。
「そっか! あ、でもあそこにいる、仲間のウンケイとブンブクはもう知ってる」
「・・・何だあれは?・・・
シカが目を
「かっ・・・!!」
突如シカが目を見開き、顔を真っ赤にし、口を両手で
「ん? どうした?」
その様子に心配したしゃらくが、シカの顔を
「頼む! あの子を!・・・
完