第六十二話 「徴兵令」
人のいない城下町に建てられた
「どうゆう意味だ?」
しゃらくがウンケイに尋ねる。
「
「へェ。どうする?」
「俺達には本来どうでも良い話だが、
ウンケイが自分の
「じゃア行こうぜ! ここの戦を早く終わらせる為にも!」
しゃらくが瓦版の先に見える城を見上げる。
「そうだな。俺達にとっても悪い話じゃねぇ。それに・・・」
ウンケイが後ろを振り返り、誰もいない異様な町を見つめる。
「この人のいねぇ城下町とも、何か関係がありそうだしな」
しゃらく一行は瓦版を通り過ぎ、その向こうに
やがて、しゃらく一行が城門へと
「止まれ。何者だ?」
門兵が
「なんだよおっかねェ顔して。瓦版を見て来たんだ。俺達にも手伝わせてくれ」
しゃらくがニコリと笑う。派手な見た目の青年と僧兵の格好をした大男、そして小さな狸が一匹という奇妙な一味に、門兵が険しい顔から更に眉を
「へへっ。貴様らなど何の戦力にもならんわ。さぁ帰った帰った」
門兵の一人が
「待てよ! おれ達はお前らの何百倍も強・・・」
ウンケイがしゃらくを制する。
「俺達は旅をしてるんだが、金が必要になってな。数がいるのは悪い事じゃねぇだろ? 荷物持ちでも何でもやるぜ?」
ウンケイが淡々と話をする。前に出て来るとかなり大きいウンケイに、門兵が
「・・・まあいい。志願する者は通して良い事になってる。・・・だが死人に
すると巨大な城門が、大きな音を立ててゆっくり開いていく。ニヤリと笑いながら端に退く門兵を、しゃらくは
「・・・あの大男は使えそうだが、他は駄目だな」
「あぁ。だが力があっても、“あれ”は倒せんからな」
城へ進んで行く三人を見ながら、門兵がひそひそと話している。そしてゆっくりと城門が閉まる。
「何だよあいつら! ムカつくなァ!」
しゃらくが顔を真っ赤にして、
「・・・しかしあの門兵といい、こいつらといい、過剰なまでに武装しているな。町には人っ子一人いねぇし、俺達は化け物でも相手にするのかもな」
「人相手より、そっちの方がいいけどなおれは。わっはっは」
張り詰めた空気の中、しゃらくとウンケイだけが笑っている。一行は城内の兵に睨まれながらも敷地を進み、やがて更なる門の前に辿り着く。門の前にはやはり武装した門兵が二人、険しい顔をして立っている。
「止まれ。ここから先は武器の持ち込みを禁ずる」
門兵がしゃらく達をギロリと睨む。
「はいはい」
ウンケイが、持っていた大薙刀を門兵に手渡す。屈強な門兵が小さく見える程の
「・・・何て重さだ。こんなに重くては武器として扱えまい。やはりまたこいつらも・・・」
「他に武器はないのか?」
もう一人の門兵が
「ねェよ」
「その荷物の中を見せろ」
門兵が、しゃらく達が背負っている大風呂敷を指さす。
「えェ!? めんどくせェよ!」
「さっさとしろ。無礼者めが」
門兵は表情一つ変えずに急かす。嫌そうに
「ほら言ったじゃンよ」
すると、門兵が荷物に近づき、足で退かしながら荷物を見る。
「おい! 何してンだ!」
しゃらくが唾を飛ばす。
「おいてめぇ」
ウンケイも顔を
「よし、通れ」
武器が無いことを確認した門兵がくるりと踵を返し、再び門の前へ戻る。
「よしじゃねェだろ! なに人の荷物を足蹴にしてんだァ? 謝れよこの野郎ォ!」
顔を顰めたしゃらくが、顏が付きそうなほど門兵に詰め寄る。
「貴様! 平民
詰め寄られた門兵が腰の刀を抜こうとする。すると、しゃらくがすかさず門兵の手を掴んで、刀を抜かせない。顔を真っ赤にした両者が睨み合う。
「まぁ待て。我々は今兵を必要としている。無礼者のようだが、生かして兵として
もう一人の門兵が、しゃらくに詰め寄られた門兵を諭す。その光景を尻目にウンケイとブンブクは荷物をまとめている。
「・・・チッ! さっさと行け!」
門兵が刀から手を放し、しゃらくを片手で押す。
「だから! 行けじゃなくてよォ!」
押されたしゃらくが再び詰め寄ろうとする所を、ウンケイが無言で制する。
「さっさと行こうぜ」
荷物とブンブクを背負ったウンケイが、開かれた門を通っていく。膨れながら荷物をまとめたしゃらくが、門兵達に舌を出しながら後へ続いて入っていく。しゃらく一行は城内へ入り、やがて最上階の大広間へと通される。しかし大広間には誰もおらず、ガランとしている。
「ここで待て」
城内を案内していた侍がそう言うと、しゃらく達を中に残して、ぴしゃりと
「・・・広いな」
ウンケイが大広間を見回しながら呟く。
「誰か来る。・・・でけェな」
そう言うと、しゃらくが鼻をクンクンと動かしながら、広間の奥の闇を見つめて呟く。すると、ズシ・・・。ズシ・・・。と静かながら重みのある足音が、しゃらくが見つめる広間の奥の方から聞こえて来る。バンッ!! 勢いよく奥の襖が開く。開かれた襖から現れたのは、しゃらくの上背の倍はありそうな程の大男で、着物こそ
「よぉ!! よく来たな!!」
大男が、離れている中でも思わず耳を塞ぎたくなるほどの大声を発し、ニィッと笑う。
「へへ。ありゃア獣だな」
対峙したしゃらくとウンケイもニッと笑う。ウンケイの肩に乗っていたブンブクは、案の定丸くなって小刻みに震えている。すると大男が入ってきた襖から、綺麗に身なりを整えた貴族のような男が、大男とは対称に静かに広間へ入って来る。そしてそのまま奥の飾られた
「まぁ座れ」
大男がその壇前で
「お前らよく来てくれたな!! 話は瓦版に書いてあった通りだ。此処へ来たって事は、引き受けるって事で違いねぇな?」
大男が相変わらず大きな声で話す。対称に後ろの男はこちらに目を向けず、
「一つ質問をいいか? 敵ってのは何なんだ?」
ウンケイが大男に尋ねる。すると大男がニッと笑う。
「“
完