第六十話 「白尚坊」
「フフフ。
広大で
「黙れ
屋敷の中にいる男が
「まぁお待ちを。我々は
声を荒げる男を、別の男の声が冷静に制止する。それを聞き、白尚坊が目を
「チュチュ。それもそうか。では遠慮なく、
すると、白尚坊の周囲の男達が刀を抜き、白尚坊に近付く。
「フフフ。舐められたものだ」
白尚坊が
「そんな
白尚坊が侍達をギロリと睨む。侍達は、蛇に
「フフフ。大人しくしようと思っていたが、この白尚坊、やはり
白尚坊が前を向き直り、再びニヤリと笑う。
「やはり貴様ら皆殺しにして、
*
「着いたぁ!!」
「あれが・・・」
「すっげェ〜!」
一足遅れて来たしゃらくも目をまん丸くしている。その木の大きさに、見上げていたブンブクは顔を上げ過ぎて、
「さぁ行こ!」
「ようこそ!
大木の枝の上に建つ砦の中、
「おいおい辞めてくれよ! 悪いな、邪魔しちまって」
先頭のしゃらくが、あたふたと慌てふためいている。
「何言ってんだ。あんたらは、俺ら
先頭に座っていた狸がニコニコと笑っている。
「おいらもいるぜ!」
するとコン吉が、しゃらくの背中からぴょいと顔を出す。
「コ、コン吉!? お前こんなとこで何してる!?」
砦の狸達が目を丸くしている。
「お、有名人みてぇだな」
ウンケイが狸達の反応に驚く。
「久しぶりだなコン吉! お前あの戦に勝手に付いてったらしいじゃねぇか! 心配したぜ馬鹿野郎!」
ゴン! 先頭の狸が、
「いってぇ!」
コン吉が
「お前ら、あいつを知ってるみたいだな?」
そんな様子を見ていたウンケイが、
「あぁ、コン吉の事かい。あいつはね、この砦にいっつも遊びに来てたんだよ。俺らと
そう笑って、狸はその場を去って行く。
「へぇそうか」
ウンケイがニッと
「そうだ! おいら今日は遊びに来たんじゃねぇんだった!」
つい今し方まで頭を押さえていたコン吉が、
「これ届けに来た」
そう言ってコン吉が、封筒をげんこつ狸に渡す。げんこつ狸は不思議そうにそれを受け取り、封筒を開けて中の手紙を開く。
「どれどれ。・・・
狸が文面を読み上げると、
「なにぃ〜!!!?」
砦中の狸達が目を見開き、大声を上げる。
「ゆ、友好誓約!? ・・・何だそりゃあ!?」
狸達が大慌てで、手紙に穴が開きそうな勢いで文章を
「なァウンケイ。狸達どうしちまったんだ?」
狸達の様子を見たしゃらくが、ウンケイに耳打ちする。
「あぁ。どうやら、狐達と仲良くしろって書いてあるらしい。そりゃあ動揺もするだろう」
「わははは。流石だぜ牛のおっさん」
*
所変わって、
「フフフ。
白尚坊が手に付いた血をペロリと舐める。
「き、貴様ぁ! もう
屋敷の中の男が声を荒げる。
「フフフフ。命乞いは人間の
「ん何ぃ〜!?」
白尚坊に
「まあお待ちを、チュウビ様。流石は
チュウビと呼ばれる出っ歯の男の傍にいる、側近の男が口を開く。
「フフフ。人間にしては賢明だ」
白尚坊がニヤリと笑う。
「な、何だと!? ・・・で、では、どうするのだ?」
チュウビが唾を飛ばす。
「既に手は打っております」
すると、屋敷内の奥の
「チッ。俺を呼びつけやがって、何の用だ」
開いた襖から出て来たのは大男で、歳は若く、着物の上を脱いだ上裸姿で、全方向に
「・・・ほう。・・・狐狩りか」
大男が白尚坊を見てニヤリと笑う。
「フフフ。
ズバァァァ!!!
「チッ。つまらねぇ」
いつの間にか庭に下りて来ていた大男に
「よくやったぞ、軍隊長“ヤマアラシ”。
「うるせぇ黙れ」
ヤマアラシと呼ばれる大男が、チュウビをギロリと睨み、刀に付いた血を振り飛ばしながら屋敷の中へ戻って行く。
「な、・・・相変わらず何と無礼な奴! 貴様に武の才が無ければとっくに首を
チュウビが顔を真っ赤にする。
「まぁ何はともあれ、これでまた名が上がりますな。“
側近の言葉にチュウビがニタリと怪しく笑う。
完