第四十九話 「しゃらく対イナリ 弐」
ドオォン!! ドオォン!! 戦場に、まるで
「クククク! 狸共が
キンモクと、その後ろを
「あらあら、
キンモクの
「ククク。お前の
「フフ」
タマモは
一方、八百八狸軍の本陣にて、
「・・・まさかお前が、ここまでやられるとはのう」
太一郎が心配そうな
「・・・すまねぇ
竹次が
「・・・まだやれるか?」
太一郎が
「
竹次が太一郎を
「・・・あい分かった。どうせ止めても行くじゃろうしのう。ほっほっほ」
太一郎が優しく微笑む。竹次も
「相手の幹部は二人落した。残りの四人の内一人は、しゃらく君が。そしてお前と
太一郎の話を静かに聞く竹次が目を
「残りの幹部二人も本陣を離れ、戦場へ降りて来たという。しゃらく君とウンケイ君、そして竹蔵を信じ、わしらはこの二人を
太一郎が優しくも鋭い眼差しで竹次を見る。
「ああ」
そう言うと竹次が、傍にあった自身の二対の刀を手に取り、まるで傷が治ったかのように、サッと立ち上がる。
「ほっほっほ。若いのう」
ガガガッ! ガガッ!! 目にも止まらぬ速さで飛んで来る
「ハァハァ・・・ガルルル」
しゃらくが
「ハハハ。まるで獣だな、人間」
イナリがニヤリと笑う。
「何度やっても同じ事! さっさとくたばりやがれ!」
するとイナリがしゃらくを指差し、大量の笹の葉が
「ハハハ! そんなんじゃあ、いつまでも俺に近づけねぇぜ!?」
すると、しゃらくが不意にニヤリと笑う。
「“
バキィィィ!!! 両腕を大きく広げ膝を着いているしゃらくの後ろで、イナリが両膝を着く。しゃらくの鋭爪にはイナリの着物の切れ端が引っ掛かっている。
「・・・チッ!」
イナリに膝を着かせた筈のしゃらくが舌打ちをし、イナリの方を振り返って再び構える。
「・・・くっ・・・くそがぁ!」
イナリが、着物がボロボロに引き裂かれた胸を
「・・・へへへ。今のは危なかったが、せっかくの
イナリが再び手を動かし、再び大量の笹の葉がしゃらくに向かって来る。しゃらくは四つん這いで笹の葉を躱して行く。そのまましゃらくは笹の葉から距離を取るように、逃げて行く。
「ちょこまかと!」
「・・・」
一方のしゃらくは、イナリの周囲をまるで円を描くように走っている。そして笹の葉から逃げながらも、笹の葉とイナリの動きを静かに見つめている。
「何が楽しくて回ってんだか知らねぇが、そのままじゃ体力
「ハハハ! 体力切れか! 言わんこっちゃねぇ!」
刹那、しゃらくが振り返り、縦に並んだ大量の笹の葉に片足を振り上げる。
「“
ドオォォン!!! 縦に並んだ大量の笹の葉を一気に
「何!?」
イナリが
「お前の術は確かに
蹴り飛ばした笹の葉に、背を向けたしゃらくがニヤリと笑う。
「多分、お前の術は範囲が決まってて、そこから外に出た葉っぱは操れねェ。そうだろ?」
しゃらくの言葉に、イナリの
「・・・
「野生の
しゃらくがニッと笑う。
「・・・舐めやがって! 俺の術中内の葉はまだあるって事を忘れてねぇか!?」
イナリが指を動かすと、地面に刺さっていた数枚の笹の葉が、しゃらくに向かって飛んで行く。しゃらくは四つん這いになり、笹の葉を次々に躱しながら、イナリの方へ向かっていく。
「くっ!!」
すかさずイナリが指を回すと、しゃらくを追っていた葉が方向を変え、イナリの前に回り、しゃらくの正面から再び飛んで行く。しかし、しゃらくはそのまま直進を続け、葉との距離がどんどん縮まる。
「“
ガガンッ! しゃらくが四つん這いから二足に立ち上がり、両腕を広げ、向かって来る葉を吹き飛ばす。そして、そのまま勢いよく地面を蹴り、宙高く飛び上がる。
「馬鹿め!!」
すると、イナリの背後から三枚の笹の葉が飛び出し、一斉にしゃらくに向かう。しゃらくは両手で二枚の葉は弾き飛ばすが、残りの一枚はしゃらくの顔面を
「ハハハ! 切り札は最後まで取っておくもんだぜ!」
イナリが牙を
「そうだなァ!!」
そう言って顔を戻したしゃらくは、笹の葉を牙で
「はっ・・・!?」
イナリが冷や汗を垂らして目を見開く。
「“
バキィィィ!!! 殴られたイナリは地を
完