第四十八話 「しゃらく対イナリ」
「・・・ゴクリ」
「・・・くそっ!」
しゃらくの周りを
「・・・よくも俺の美しい顔を
「”
イナリが腕を大きく振り下ろすと、浮遊していた笹の葉が
「やべェ!」
しかし、しゃらくは凄まじい反射神経で、それを
「何でそれを躱せんだよ! 大人しく死ねよ!」
イナリが牙を
「こんなとこで死ねるかよォ!」
しゃらくが宙に跳び上がる。笹の葉はしゃらくを追いかける。
「”
空中でしゃらくが
「この野郎!」
するとイナリが、地面に突き刺さった笹の葉を抜き、両手の爪にそれぞれ付け出す。
「うォらァァ!!」
しゃらくが、空中で笹の葉を次々に弾いていく。
「“
ブオォン!! イナリが鋼鉄の笹の葉を付けた爪を、しゃらくに向けて振る。しかし、しゃらくは身を
「っぶねェ!」
しゃらくの体中が一瞬で汗まみれになる。すると、攻撃を躱された
「まだだぜ」
そう言うと、イナリの両手の爪に付いた笹の葉が、一斉にしゃらくに向かって飛び出す。
「“
バキューーン!! しゃらくは腕を前に出し急所は防ぐも、鋼鉄の笹の葉が体中に突き刺さる。
「ゔっ・・・!!」
イナリがニタリと笑う。すると宙を舞っていた大量の笹の葉が、一斉にしゃらくに向かって飛ぶ。
一方、千尾狐軍の本陣では、千尾狐総大将の
「白尚坊様ぁ!」
戦場の
「何事?」
タマモが
「お
「・・・話せ」
白尚坊が目を
「はっ! 幹部の
「何だと!?
報告を聞き、キンモクが顔を真っ赤にする。タマモの方は対称的に、悲しげな表情をしている。
「・・・で、ですが! 同じく幹部の
狐が続けて報告するが、白尚坊は表情を変えず
「・・・梶ノ葉とコックリを敗った二人には、八尾を向かわせろ。イナリには太一郎の首を獲って来るよう伝えてくれ」
「はっ!」
すると、白尚坊の指示を受けた狐は鳥に変化し、再び戦場へ羽ばたいて行く。
「・・・フフフ。そろそろ
白尚坊が耳まで届きそうな程
「いえ白尚坊様。白尚坊様のお手を
「ククク。その通りその通り。私達も行かせて下さい。必ず向こうの主力の首を獲って参ります」
タマモとキンモクがニッと笑う。
「フフフ。よかろう」
白尚坊がそう言うと、タマモとキンモクが勢いよく戦場へ飛んで行く。
「・・・さて、次はどうする?
白尚坊がニヤリと笑う。
「竹蔵さんあそこだ!」
戦場の中、八百八狸の一人が一点を指差し、唾を飛ばす。
「どこだぁ!」
目の前の千尾狐達を次々と
「見つけたぞこの野郎ぉ!」
無表情のまま表情を変えない八尾が、向かって来る狸達に拳や巨大な尻尾を振り回し、次々に吹き飛ばしている。
「・・・つ、強ぇ! なんて力だ!」
狸達が、その強さに怯んでいる。すると、狸達の上を何かが飛んで行き、物凄い勢いで八尾に向かう。
「おらぁぁ!!」
ガンッ!!! 飛んで来た竹蔵が両の刀を振るが、八尾は表情を変えぬまま、両手でその刀を
「竹蔵さん!」
八尾と
「チッ!」
舌打ちをした竹蔵が、八尾の両手を両足で蹴って刀を離させ、そのまま後方へ飛んで距離を取る。
「・・・なるほど、確かに強ぇな。だが竹次の
すると、八尾の元へ一羽の鳥が飛んで来て、八尾に何やら耳打ちをしている。
「・・・」
耳打ちされた八尾が、竹蔵をギロリと睨む。
「・・・ゲホッ! ゲホッ!」
「ハハハハ! 油断したなぁ?」
高笑いするイナリが見下す先で、全身血だらけのしゃらくが地面に倒れている。
「お前じゃあ、俺の術には勝てねぇよ。勝負あったな」
するとイナリの元にも、一羽の鳥が耳打ちしに来る。
「了解」
そう言うとイナリが
「・・・待てよこの野郎ォ。ゲホゲホ・・・勝負あっただァ? お前の目は
しゃらくが、震え、血を吐きながら体を起こす。
「何て奴だ。まだ動けるとはな。だがこれで終わりだ」
イナリがニヤリと笑うと、大量の笹の葉がイナリの後ろを舞い、それらが一斉にしゃらくの方を向く。
「勝負はこっからだぜ」
血だらけのしゃらくがニッと笑う。
完