スマフォを持っていただけ
その母親は、事件の加害者だというのに、警察の取り調べに子供たちの安全を守っただけと自信満々だった。被害者はスマフォを手に、その母親宅の近くをウロウロしていただけだった。以前送られてきた不審者情報と容姿が似ていたと、母親は言っていたが、警察が調べてみると、最近送信された不審者情報に被害者と年齢が近いものはなく、母親の勘違いではないかと警察が指摘すると、こんな昼間に仕事もせずに男性がウロウロしているのはおかしいと自分が不審者と判断したのは正当であると言い張っていた。だが、被害者は高学歴のフリーのプログラマーで、堅苦しいスーツを着る必要がなく、スマフォを使って普段パソコンを通じて仕事していた取引先の住所を調べて歩いていただけだった。
だが、母親は、スマフォを持って、ひとの家の近くをウロウロしていた方が悪いと被害者への謝罪も反省もなく、被害者に落ち度があると言い張っていたが、警察の取り調べ中に被害者が死亡し、傷害事件から殺人事件に代わっても、自分は悪くないという態度を続け、彼女の夫は、殺人犯と夫婦ではいられないと、離婚を申し出て、彼女の両親も娘のしでかしたことを恐れ、あっさり、離婚を認め、子供の親権も争うことなく夫の物になった。
犠牲者がひとりで、初犯ということもあって、無期懲役のような重い刑ではないが実刑になった。
被害者遺族は、それでは満足できず、彼女に民事で損害賠償を求めた。また、その被害者に仕事を依頼していた企業も、彼がいなくなったことで大損害を被ったと、その母親に損害賠償を求めた。
多額の賠償金を背負い、無実の人間を殺したということで、刑期を終えてからも、社会復帰は難しく、服役中に大きくなった子供たちにも会えず、その後、被害者の姿が見えると言って誰にも看取られずに死んだ。