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ガールズ・トーク

「……でもって、私はその場で失神しちゃったからそれ以上全然なんですけど」
まだ緊張で手が震えている。まあそりゃ当たり前か。タージアは人間恐怖症なんだし、おまけに王子にいきなり求婚なんてされちまったらぶっ倒れるのも当然。

「でも、前々から王子ってタージアのこと、そんな感じの目で見ていたしね。ほらマティエが子供に戻っちゃったとき」
一番彼女のことには詳しいであろうジールはそう言う。思い返してみると……そうだな、タージアのことをセルクナって言ってたし。結構調べていたのかもしれない。

で、どーすんだタージアは。
「いいいいきなりそんな事言われちゃっても私わかんないです。男性のことなんてこれっぽっちも考えたことなかったですし、ましてやシェルニ王子って……」
「そっかな、あたしはすっげうらやましいと思うんだけど。だって一国の王になる人にプロポーズされたんだし」
「え、ええ、パチャさんの意見もごもっともですけど、私この仕事をずっとやっていきたいのであって、王妃になると、その、こういうことできなくなっちゃいますし、ここで皆さんとお話することも……」
「どうすんのタージア。この際きっぱり断っちゃえば?」
「はい……ジールさん。私には務まらないですし、今度王子にお会いしたときに断ろうかと」

女たちのそんな会話を聞いて、俺はふとあの時の、エセリアと初めて逢った時の夜のことを思い出していた。

そうだ、俺もいきなりあいつに結婚宣言されちまって、どうしていいか分からなかったっけな。
嘘でもいいからってあいつは言った。けど嘘には全然思えなかったし。

「どうしたのラッシュ。あんたにしちゃすごく大人しいけど」
「ジールさん、あたし勝ったんですよラッシュさんに。しかも一本勝ちで!」
「え、マジ!?」
「マジっす、ラッシュさん全然強くないんですもん!」

いやそうじゃねえ。俺だって油断してた。こいつ戦いに出たことがなかったって言うから。

「大丈夫! 今度お仕事があったらあたしにも回して。ラッシュさん以上に働いてみせるから!」
あーあ、図に乗っちまった。こういうタイプは俺は苦手だ。
苦手というか、とにかく口が立つやつは……

そう、誰より早く死ぬ。

それは俺が何百回も戦場に出ていたから、一番分かっている。

「だったら俺も仕事が入ったらやってみたいな。いいかなラッシュ」
パチャの言葉に感化されたのか、フィンも加わってきやがった。
タージアの心配もしたいところだが、このバカップルをどうにかして仕事から引き離したいところ。
人なんて殺したことないんだったら、もうそのままでいいじゃないか……って。
いったん手が血に濡れたら、後戻りはできないしな。

……と、そんな事を考えていたら、仕立て上げたばかりのピカピカの鎧に身を包んだラザトが、柄にもない笑みを浮かべて帰ってきた。
だがトレードマークのボサボサの長い髪、それにヒゲは相変わらずそのままだった。そこだけは安心できるかな。
「よっし、お前ら全員揃ってるな。城から仕事をもらってきたぞ、喜べ!」

悪いときに悪いことは重なるモンだ。

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