本当のカミサマ
ー相変わらず全身は火照るような熱さだが、あの鼻から胸の中まで焼き尽くすような感覚は、不思議と消えていた。
地響き? 遠くでなんとなく聞こえているような気がする。つーかどこだここ?
「目、さめたか」
寝てたのか俺? ずっと上から誰かの声が。けど今まで聞いたことのない……いや、ずっと前に聞いたことある感じの、妙にたどたどしいしゃべり。
ゆっくりと目を開けると、そこには……
ってでけえ!!! 石のカタマリみたいな大男! 灰色一色の身体に、まるで鎧をつなぎ合わせたかのような皮膚。鼻先には太く短いツノが生えていて……そうだ、こいつは……!
「気がついたか」
岩肌をくり抜かれて作られた大きな部屋、そして葉っぱの敷き詰められたベッド。そこに俺は寝ていた。
「もう少し遅ければ、お前丸焦げになってた」
不釣り合いに小さな目と耳。そして同じく小さな口からとつとつとそいつは語りかけていた。
俺の足は葉っぱでできた包帯でぐるぐる巻きにされている。そっか、地面めちゃくちゃ熱かったからな。
「大丈夫、たいしたヤケドじゃない。お前の仲間は先に助けた。ちょっとケガしているが無事だ」
ありがとな、とそいつに告げると、まるで申し合わせたかのようにルースが入ってきた。
「よかった、ラッシュ目が覚めたんだね」
頭には俺と同じ葉っぱの包帯が巻かれ、左腕は首から布の切れ端で吊っている……あいつの方がひどいケガだったみたいだな。
「ナウヴェルが僕らを助けてくれたんだ」
え……ナウヴェル!? それって双子が教えてくれたやつのことじゃ?
この島に昔流れ着いて、神様のことを教えて、そしてこの地で死んだと聞いたぞ。なのになんで……?
いや、それよりも……俺はあんたのことを知ってる!
だけどあの時、すでにあんたは死んでいたはずじゃ……
そう、マルデの攻城戦のときだ!
「ああ、マルデの戦い。お前は私の名前を知らなかったし、そして私はお前の名前を知らなかった」
知らない同士お互い様ってことか。
「私はあのとき……そう、まだまだはっきりと覚えている。矢で目を貫かれ、たくさん血が流れ、意識もほとんど消えかかっていたときだ」
覚えてる! あの時人間のクソ野郎が倒れていたあんたを蹴っていた。だから俺はそいつをぶっ飛ばしてやったんだっけ。
俺に話しかけるナウヴェルの左目をよく見てみると……眼窩に古い傷跡がある。やはりあの時の傷か。
「あのとき、死の淵にかかっていた私を、ディナレ様が救ってくれたのだ、そして」
え、ちょっと待った。「ディナレがあんたを助けに来た……だと?」
年老いたサイ族の戦士、ナウヴェルはまた静かに語った。
「ああ、ほのかに輝く麻の服をまとった狼聖女、ディナレ様だ。私は今でもはっきりと覚えているさ」
マジかよ。あの時ディナレが救ったのは俺だけじゃなかったってことか!
「その時ディナレ様は私に言ったのだ。私の遺志を継ぐ子供が大きくなって自分のもとに現れたら、その時はお前が盾となってくれ……と」